- ナノ -


その4
純白の翼に、それに負けないくらい綺麗な白いロングヘア。
上質な衣装。
綺麗な顔立ち。



それは、間違いなく、「百神」で見慣れた「ヒュプノス様」の姿だった。

ぽかんとしている私を見て、ヒュプノス様は穏やかな声で、「コキュートス川のニンフはこれで全員かしら?」と言った。
はっと我に帰る。
大変、挨拶もせずにぼんやりしてしまった!
「こ、こんにちは!サラと申します!」
膝をつき、最敬礼の形で挨拶。
すると、ヒュプノス様がふふ、と笑う声が聞こえて、優雅に私に近寄ってきた。
そして、ふっと影がかかったと思ったら、ヒュプノス様が私の目の前でしゃがんだ。
そして、
「サラと言ったわね。顔をよく見せてちょうだい」
と言って、両手で私の顔を包み込んで、くい、と顔の向きを変えた。
「へっ!?」
突然の温もりと綺麗な手のすべすべで柔らかい感触に戸惑う。
仲間も固唾を飲んで見守っている。
というか、自分の何倍も美人な人(?)の顔が目の前にあって、私をじろじろ見ているなんてシチュエーション、なんだかすごく恥ずかしい。見ても良いことありませんよ。
しかし、逃げる訳にも言わず、ヒュプノス様に従っていると、ようやく手が離れた。

ヒュプノス様は私に向かってにっこりと微笑んだ。同性でもドキドキしてしまうほど綺麗だ。しかし、
「決めた。サラ、あなたでいいわ」
何が、と訊く前に、突然の浮遊感。
「…えっ?」
そして、すぐ状況を理解する。
私はヒュプノス様に抱き上げられ(案外力持ちだ)、ヒュプノス様は宙に舞い上がったのだ。
仲間の唖然としている顔が遠のく。
「さあ、行きましょう。」
「えっ、ちょ、待っ…」




言い終わる前に、凄まじい向かい風が私に激突した。




















人生が変わった日
(私、どうなっちゃうの)


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