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ポケモンセンターの厨房を借りて鍋に火をかける。そして沸騰したら刻んだ木の実を入れて混ぜる。混ぜる。混ぜる。・・・・・・・・・焦げた。


「うっわ失敗か・・・・・・」


まっ黒焦げの炭レベルというわけではないものの、半分ぐらいは焦げてしまっているし、混ぜすぎて固くなってしまっている。失敗以外の何物でもないだろう。


「アニポケでサトシ君が失敗しとったのがよぉ分かるわー・・・・・・」


いやあれよりはマシだけどでもポフィン作りって難しい。そう項垂れるチーゼルは、ガックリと顔を下に向けた拍子に自分を見上げる視線に気付いた。


「リィフィ? フィ?」


まだ? まだ? とキラキラ輝く期待の眼差しで見上げられて思わず沈黙してしまう。前いた世界でもペットには甘かったし寧ろ疎遠の祖父が亡くなっても涙一つ零さなかったくせに、猫が寿命を迎えたらボロボロ泣いたような人間だ。本編の"かにかま"で分かる方もいるだろうが、チーゼルは猫屋敷育ちだ。

閑話休題

とにもかくにも、チーゼルは人間<<猫な思考回路を持っていて、リーフィアのリーフっていうかブイズ全般が猫っぽく見えなくもない。現在ブイズしか手持ちにいないチーゼルは必然的に手持ちに甘くなってしまうのだ。

「うん、普通にスマン。もうちょっと待っといてなー」


人間相手なら適当に流して面倒だったら結局努力するフリして放置なチーゼルも、猫っぽい生き物のオネダリ光線なら真摯に受け止める。人としてかなり問題な行動だが、そこは外面うまく取り繕って波風立てずにやり過ごす器用さがあるので現実的な問題自体は起こらないのだ。


「フィ〜」
「サニー?」


そんなチーゼルの(猫っぽい生き物限定の)頑張りを認めたのだろうか、エーフィのサニーがゴムベラを持つチーゼルの手に軽いサイコキネシスを掛けて混ぜるペースに変化を加えてみた。飛び散った。


「フィ〜・・・・・・」


耳が垂れ下がって項垂れているサニーにチーゼルは顔には出ないが軽く萌えた。一見ひかえめに見える腹黒系な彼にしては珍しい姿に、カメラを持っていないことを後悔したぐらいには。


「うん大丈夫やでー、こんぐらいならちょっと拭けばいいd ガッシャーーッン


物凄い音に驚いて振り返ると鍋を頭から被り生地によってベタベタになっているブラッキーのムーン。物凄く熱い筈なのだがそこは流石の耐久型というべきかダメージにはなっていないらしい。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


慎重で堅実なところがあるムーンの思わぬ失態が結構可愛かったのでついガン見してたら、怒られると思ったのだろうそっと目を逸らされた。恐らく彼はサニーのように手伝いたかったがサイキネを持っていないので、直接前足で混ぜようとして調理台に飛び乗ろうとしたがドジったのだろう。


「大丈夫ですか!!?」


そして先程の音を聞き付けたジョーイさんが駆け付けてくれたのだが、状況を見るなりすぐに険しい顔をして踵を返してしまった。


「やっべ怒られる・・・・・・・・・」
「フィ〜・・・・・・」
「ブラァ・・・・・・」
「リィーフィ?」


そうして一人と二匹で肩を落としていると唐突に聞こえた三連続シャッター音。チーゼルがそちらを見ると・・・・・・。


「カメラ出さないなんて勿体無いじゃない!!」
「ジョーイさんグッジョブ!!!」



この後 滅茶苦茶仲良くなった