- ナノ -

薄桃色の温もり


僕の体は、他の仲間とは違う緑色だった。
他の仲間は綺麗な青色だったのに、僕だけ、まるで青汁のような色だったのだ。

僕の親は、汚らわしい色だと言って僕を捨てた。
他の仲間も、同じことを言って僕を攻撃し、迫害した。
他の種族のポケモンも、同じことをしてきた。
そんなんだから僕はいつも傷だらけでボロボロだったし、この体の色が嫌いだった。
それでもなんとか生き抜いて、ゴルバットに進化できた。しかし、体の色は変わらなかった。

ある日のこと。
僕はついに仲間や他のポケモンの攻撃に耐えられず、地面に落ちてしまった。
体中が痛くて苦しくて、薄れ行く意識の中で、僕は今まで僕をこんな目に遭わせた全てを憎んで、呪詛を吐いていた。そんな時だった。
「大丈夫?!」
女の子の声が聞こえた。薄く目を開けると、人間の女の子が僕を見ていた。女の子は僕をひょいと抱き上げた。
「ひどい怪我…」
女の子が悲しそうに言う。僕はと言うと、女の子の体温がとても温かくて気持ち良くて、生まれて初めて他者から与えられた温もりを満喫しながら眠ってしまったのだった。

目を覚ますと、僕は包帯まみれで、そんな僕を女の子が見ていた。
「気がついたんだね。」
女の子が優しく笑った。僕は、こうやって笑いかけられるのは初めてで、思わず照れてしまった。
「あなたは色違いなんだね。渋い色だね。」
驚いた。お世辞にも綺麗な色とは言えないだろうに、女の子は言葉を選んで褒めてくれたのだ。こんなのも初めてだ。
「私は好きだよ。君の色」
女の子が笑う。僕は、ほんの少しだけ自分の色を好きになれた気がした。
この日から僕は、女の子…なまえの手持ちになった。

なまえはポケモントレーナーなので、当然バトルもする。僕もそれに駆り出されることとなった。
しかし、彼女の指示は的確で、僕は順調に勝ち星をあげていくことが出来た。
相手のトレーナーやポケモンは、最初僕を馬鹿にしたように見るのだが、その顔はすぐに凍りついて、それがたまらなく面白かった。そして何より、僕が勝つたび抱きついて喜ぶなまえが、僕は大好きになっていった。
そんなある日のことだった。
「ゴルバット、しかもそんな変な色の奴なんか持ってて恥ずかしくないわけ?!」
僕らに負けたトレーナーが、負け惜しみで僕らを罵倒してきた。
みっともない、と思ったが、罵倒されるのは慣れているので、軽く流そうとおもった、時だった。
「ふざけんな!!」
なんと、なまえが、トレーナーの胸ぐらを掴んだ。
「この子は私の大事なパートナーだ!私はこの子の色が好きだ!次そんなこと言ってみろ!あんたを許さないからな!」
すごい剣幕でまくし立てるなまえ。
ああ、なまえは、僕の為に怒ってくれてるんだ。
なんて優しく、強い人なんだ。
それを自覚した途端、僕の目から涙が溢れ、そして、体が光り始めた。
なまえがはっとして、僕に駆け寄った。
僕の体は、どんどん変化していき、そして、
「クロバット…!」
進化した。びっくり、体の色も、緑色から薄桃色に変わっている。
「クロバット。綺麗だよ。その色も、大好き…!」
なまえが抱きついてきた。僕も嬉しくて、4枚になった翼でなまえを包み込んだ。
トレーナーが、羨ましそうにこちらを見ているのなど気にならなかった。
僕もなまえが大好きだ。初めて温もりをくれた君が、大好きだ。

抱きついてきたなどなまえの体温は、初めて抱き上げられたあの時と同じものだった。









企画サイト、シェリー様に提出。

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