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「私、マカロン食べたことないから、マカロン食べるのに憧れてるんですよ」


ある日、なまえさんがぼそりと呟いたこの言葉から、私の挑戦、「なまえさんへの恩返し☆マカロン作り大作戦」は始まった。





「…よし。」
穏やかな昼下がりの台所。なまえさんは学校に行っている。エプロンを装着して、私は目の前に置かれた材料を眺めた。卵、グラニュー糖、アーモンドパウダー、粉糖に食紅などなど…。これらは全て、マカロン作りに必要な物だ。午前中に、びくびくしながらスーパーで買って来た。これだけで疲れたが、マカロンをなまえさんに食べてもらわないと、恩返しにならないので、頬を叩いて気合を入れる。料理は得意な自覚はあったが、マカロンは初挑戦だ。インターネットで調べた簡単そうなレシピに挑戦することにした。
「なまえさんが帰って来る前に、完成させましょう」
そう呟いて、調理器具を手に取った。





マカロンはメレンゲを使う菓子である。そのため、まずメレンゲを作らなくてはいけないのだが、メレンゲ作りは難しい。まず、卵黄と卵白を分ける。使うのは卵白のみ。卵黄は後でプリンにでもする。卵白にグラニュー糖を入れて、角が立つまで混ぜる。混ぜすぎると水分と油分が分離してしまうため、角が立ったらすぐに混ぜるのを止める。メレンゲが出来たら、最初に作っておいた、アーモンドパウダーと粉糖をザルで振るい、食紅を入れたものを三回に分けて入れ、その都度粉っぽさが無くなるまで軽く混ぜる。食紅を入れたのはピンクのマカロンを作る為だ。混ぜていると、生地にツヤが出て来て、救うとリボン状に落ちるようになる。そうなったら、クッキングシートの上に4p程度の大きさに絞り出す。
「…よし。」
ここまでくれば、次は生地をしばらく乾かさなければならない。オーブンを170度に余熱し、マカロンに挟むクリーム作りを開始する。
作るクリームはバタークリーム。牛乳に、用意した分量の半分程のグラニュー糖を入れ火にかけて、あらかじめ分けておいたクリーム用の卵の卵黄にもう半分のグラニュー糖を入れる。それを混ぜて、沸騰した牛乳を入れて、全体が馴染むまで混ぜたらまた鍋に戻して弱火で温める。温度が83度になったら裏ごしをして、ミキサーを使って37度になるまで中速で混ぜてバターを入れる。クリームがマヨネーズ状になったら残りのバターを入れてミキサーで混ぜる。
「意外とクリーム作りも手間がかかりますね…」
クリームの土台が出来たら、次はイタリアンメレンゲを作る。水とグラニュー糖を混ぜてシロップを作って加熱し、沸騰し始めたら、改めてミキサーで卵白でメレンゲを立てはじめ、シロップが117度まで加熱出来たら、ミキサーをかけたままのメレンゲに投入して混ぜ続ける。こうしないとシロップの熱で卵白が固まったしまう。ミキサーを高速にしてボリュームが出るまで混ぜ続け、ボリュームが出て来たら中速に戻して混ぜ、イタリアンメレンゲの完成だ。これと先ほど作った土台を混ぜて、バタークリームは完成。
バタークリーム作りをしている間に、マカロンの生地が乾いたようだ。あとは焼くだけ。余熱したオーブンに入れて170度で3分焼いたら、140度に下げて12分焼く。ここでようやく一息つける。
そういえば、向こうの世界でも、同僚やシロナさんに菓子や料理を振る舞っていたっけ。皆さんいつも喜んでくれて…なのに…。
そこまで考えて、視界が歪んで来たその時、オーブンが鳴った。私は慌てて立ち上がり、生地をオーブンから取り出す。バタークリームを生地に挟んで、マカロンは完成だ。
「…初めてにしては、うまくできました。」
皿に盛られたマカロンを眺め、私は自画自賛してしまった。











「ただいま帰りましたー」
玄関の扉を開けると同時に、私は声を上げた。そして、すぐに異変に気づいた。
「…ゴヨウさん?」
いつも、「おかえりなさい」と出迎えてくれるゴヨウさんの声が聞こえない。私は慌ててリビングに向かった。
「ゴヨウさん…あっ」
ゴヨウさんは、食卓に突っ伏してうたた寝をしていた。そして、食卓の中心には、山盛りのマカロン。
「私が憧れだって言ったの、覚えててくれたんだ…」
マカロンは作るのが難しいのに。ゴヨウさんは頑張ってくれたんだ。
嬉しさで、胸が熱くなる。
「ゴヨウさん、ありがとうございます。これは、食後のデザートにしましょうか。」
ゴヨウさんに毛布をかけて、私は夕食作りのため台所に向かったのだった。




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