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波の音が遠く聴こえる。



潮風が駆け抜けて、花びらが舞った。
そして、僕の頭を飾る、君の手作りのベールが揺れた。
それを見て、君が笑う。
「よく似合ってるよ、ミュウ」

そう、今日は、君と僕の結婚式。
この、海の見える丘の花畑が、僕らの式場だ。



君との出会いは何年くらい前だったか。
僕の住む孤島に、君が船でやってきたんだよね。最初は、久しぶりに来た人間にびっくりしたんだけど、滅多にない機会だから、人間である君と遊びたくなったんだ。だから、君を鬼ごっこに誘ったんだよね。君は最初びっくりしていたけど、すぐに楽しそうに僕を追いかけ始めたんだ。そうしてしばらく鬼ごっこして、君が僕に追いついたらバトル。君の手持ちたちはよく鍛えられていて、僕は追い詰められていった。でも、それでいいと思ったんだ。だって、バトルをする君の目は輝いていて、その目に僕は惹かれたんだから。僕は君の投げたボールに大人しく入った。それが全ての始まりだったんだ。

君は僕にたくさんの愛情をくれた。孤島に引きこもりがちだった僕に、世界を見せてくれた。僕の想いも、膨らんでいったんだ。
僕は珍しいポケモンだから、なかなかバトルには出してもらえなかったし、どこから嗅ぎつけたのか、ハンターに追われるようになった。
しかし、君は僕を手放そうとしなかった。
「ミュウが私についてこようとしてくれる限り、私はミュウを捨てたりしないよ」
そう言って笑った君に、僕はついに、恋心を自覚したんだ。

そしてある日、ついに僕と君はハンターに追い詰められてしまった。君は、ついに僕を逃がそうとした。「ミュウだけでも、逃げて」なんて言って。
僕がついてこようとする限り、僕を捨てたりしないんじゃなかったの?僕は、まだ一緒にいたいんだ!
『いつだって、君のそばにいるよ』
そうして僕は、持てる力の全てを使って、ハンターを追い払った。そして、勢いのまま君にいったんだ。
『君を愛してる。だから、そばにいて。』
君はとても驚いていたね。でも、顔を真っ赤にして、まんざらでもなさそうな君の顔は、見てて飽きなかったな。



そうして、僕と君はゆっくり愛を育んでいった。ポケモンと人間の恋は世間では認められていないらしくて、僕たちはいつも隠れて愛を囁きあった。君の家族にも言えないことで、君には辛い想いをさせたと思う。だけど、君を手放したくなかった。君とともにいたかったんだ。だから君が世間より僕を選んでくれたことに、とても感謝しているんだ。



そうして、ようやく迎えたんだ、今日という日を。




君は白いワンピースを着て、僕とお揃いのベールをつけている。どちらが花嫁かわかったものじゃないが、君が、「ミュウはかわいいからベールが似合うよ!」と言って聞かないから、折れたんだよ。まあそれも幸せの一ページってことで。
世間に認められていないから、教会にも頼めないし、指輪を買うお金もない。立会人は僕たちの関係を優しく見守ってくれた君の手持ちポケモンたちだけだ。


それでも、君が幸せそうに笑うから、僕も幸せなんだ。


「ミュウ」
『なんだい?』
「大好きだよ」
『僕もさ』



潮風が一層強く吹いて、君の手持ちポケモンたちが鳴き声を上げる。
青空の下、僕たちは夫婦になった。




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