聖女と図書館
今日のテレサは、ミオシティへとやってきていた。 目的は、ミオ図書館である。 「図書館に来るのも久しぶりだね、テレサ」 「ええ、そうですね。アル君」 テレサと、そのパートナーであるアル君ことタブンネのアルベルトは、本を読んで勉強することが好きなのである。おかげで、二人(?)はかなり博識なのだ。 擬人化したタブンネを伴った修道女は周りの注目を集めているが、テレサとアルベルトは気にした風もなく図書館へと入っていった。
「あら、ゴヨウさん!」 「おや、テレサさん」 図書館の二階。テレサは友人と出会った。四天王の一人で、この図書館の常連であるゴヨウである。お互いよく図書館を利用する者として、仲良くなったのである。 「お久ぶりです。お元気そうで何よりですわ」 「テレサさんこそ。アルベルトも、こんにちは」 「ご機嫌よう、ゴヨウさん」 二人(とアルベルト)とも大人しい質の人間であるからか、彼らの周りには和やかで穏やかな雰囲気が流れる。四天王と修道女のコンビはやはり注目の的なのだが、二人とも全く気にしていない。 そして、そんな空気の中、乱入者が現れた。 「ゴヨウさーん、虫ポケモンの本探しても見つかり…って、あれ!?テレサさん?」 「うるさいですよ、リョウ君」 「え?リョウ君?」 なんとそれは、この間テレサの教会を訪れた虫取り少年だった。
「まあ、ではリョウ君も四天王の一人なのですね、凄いです」 あの後、突然の再会に固まった二人を、ゴヨウはどうにか談話スペースに引っ張っていき、二人から訳を聞いたのだった。 「テレサさんは少し社会情勢に疎いところがありますからねぇ…」 ゴヨウが呆れたようにため息をつく。 「禁欲生活なので、テレビも雑誌も教会に無いんですよ、すみません」 「いえ、怒ってるわけではありません」 また和やかな空気を放出する二人に、リョウは頬を膨らませる。 「ゴヨウさんばっかりずるい!」 喚くリョウに、ゴヨウは嫉妬の篭った視線を向ける。 「ずるくありません。だいたいあなた、テレサさんにご迷惑をお掛けしてさらにお茶をご馳走になったなんて、あなたの方がずるいですよ!」 バチバチと火花を散らす二人。すると、テレサが困ったように声を上げた。 「喧嘩は止めてください。ここは図書館ですよ?静かに!」 まるで、小さい子に、めっ、と言うような優しい口調に、二人の頭は冷えた。二人してテレサに謝罪する。 「でも、そうですね。ゴヨウさんにはお茶をご馳走したこと、ありませんでしたね。今度教会にいらしてくださいな。せっかくですから、ご馳走しますわ」 テレサの言葉に、ゴヨウは嬉しそうな顔をした。 「ねえねえテレサさん、その時はボクも来て良いですか?」 「はい、もちろん。」 喜ぶリョウを睨みつけるゴヨウ。 よく気が回るテレサだが、この男二人が自分に抱く感情には疎い。だから呑気でいられるのだ。 それを一番よく知っているアルベルトは、深くため息をついたのだった。
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