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IN DREAM


※グロ
マッドハッターアナスイ
チェシャ猫ディアボロ
女王様シーザー

最近、殺される夢ばかり見る。幸いだったのは夢の中は痛覚がないということだけだ。

「ぐ、え……っ」
今日の私は虫の息になるところまで生かされていた。嘔吐物と固まった血が喉の奥に溜まって呼吸しにくかったが、私を解体したがる本人はそんなことまるでどうでも良いという風に私の爪を一枚一枚剥いでいる。いつからだろうか、こんな夢を毎日毎日見るようになったのは。最初の頃は抵抗したり暴れたりしていたのだが、そうすると不必要に殴られるだけなのでそれももう止めた。何をどうしたって、私は名前も知らない彼に殺されるしか無いらしい。
「名前……君を愛している……」
まるでお茶会で使うような金のフォークとスプーンとナイフで顔の皮を剥がされ、歯を一本一本引き抜かれ、喉の奥から舌を引きずり出され、手足の爪を剥がされ、眼球を一つだけくり貫かれ、体を切開され、内臓を掬い出され、骨を引き抜かれ、最後に残った眼球を食べて言う科白が"愛している"。頭がイカれている。笑った積もりだったが舌が引き抜かれているため、空気が掠れた音がしただけだった。夢から覚めて数週間、私は本当に舌を抜かれたように声が出なかった。

夢を見ている、という実感がわく前にピンク色の猫に噛み付かれた。豹のような大型の体と肉食獣さながらの鋭い牙であっという間に私の体は食い荒らされた。この化け物はいつも私の頭と骨だけを上手に残し、気分で肉を食い千切り、腹がいっぱいになった後は生首になった私といつもお喋りをしたがる。それだから、いつも私は肋骨が剥き出しであったり内臓や骨が乱雑に散らばっていたりしているのだ。しかし、それでも、丁寧に分解されるよりはマシだ。ぼう、とそんなことを考えていると目の前の猫が「貴様は、私だけのものだ」と言ってきた。そこら辺に転がっている骨をしゃぶっていればいいのに、わざわざ私の生首に甘噛みをしてくる。どうして、こんな変な夢ばかり見るのだろう。
「……うわ、」
夢から覚めると、私の首は歯形でいっぱいだった。

今日は夢の中で唯一名前を知っているシーザーという男の人だった。彼は私が欲しくて堪らないらく、いつも私を死刑台にひざまずかせて浮気をしていないかと心配してくる。この前はあの猫につけられた歯形が見つかってそのままギロチンで頭と体を切断された後、彼にずっと体を触られていた。今日はというと夢の中に入った瞬間から馬乗りされて首を絞められている。数分もすれば首は変色して、シーザーの爪が食い込んで血が流れる。全く、骨が折れても死なないのだから厄介だ。というのもこの男、私の夢の中では珍しく私を殺すのが苦手らしい。勿論、怒ったときは手は付けられないがこういう時だけは戸惑ったように眉を寄せて私を見下ろしてくる。泣いて謝りながら私の首を絞めるくらいなら止めればいいのに。若干の息苦しさを感じながらも、彼の涙を見ていると案外その顔も悪くは無くて、そんなことも言えなくなってしまった。
「……これ、隠せるかな」
夢から覚めると、私の首には彼の手形がしっかりとついていた。

IN DREAM
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