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自己主張系男子


「はーいみなさーん!朝ご飯できましたよー!」

大きな声で呼ぶとのそのそとチームの皆がテーブルの周りに集まってくる。
家畜の餌やりのようだと思ったのは秘密にしておく。

「ん〜名前おはよ〜」
「はいメローネさんおはようございます」

まだ眠そうな声とは裏腹に朝っぱらからキツーいハグをして来るメローネさんを剥がしているとリーダーがいつの間にか後ろに立っていた。

「今日はスクランブルエッグなのか」
「あらリーダーおはようございます。あ、何かダメな物でも...」
「いや、久しぶりだと思っただけだ。気にする必要はない。」
「そうでしたか!あれ、イルーゾォさんは?」
「あいつならまだ鏡の中だぜ」
「おやまあ。起こしに行かなくちゃですね...皆さんは先に食べちゃっててください!」

ばたばたと忙しく動き回る私はお恥ずかしながら暗殺チームの家政婦?をさせてもらっている。
随分前に盗みに遭って一文無しで行く所のなくなってしまった私を拾ってくださったのだ。
それからというもの私はここで雑用を任されている。ありがたや。

「イルーゾォさーん、朝ですよー ご飯できましたよー」
「ん.....名前か...許可するゥ....」

まだ眠そうなイルーゾォさん。低血圧なのかなあといつも思う。
私が鏡の中にお邪魔しようとすると、首のあたりに何かが巻き付いて私の体は重力に従って後ろへ。
やばい、と思ったけどそんなことはなくて。

「つかまえたー」
「わわっ、メローネさん!何してるんですか!」
「名前が危ない男に襲われないように守っただけだぜ」
「...誰が危ない男だよ」

イルーゾォさんが不満げな顔で鏡からにゅ、と顔を出す。あ、なんか可愛い

「そうですよ、私はイルーゾォさんを起こしに自分から入っていったんですから!何もありませんよ〜」
「いーやそうとは限らないぞ!名前以外許可しないィィイとか言って閉じ込めてあんなことやこんなこと...」
「しねえよ!」

パシンと小気味良い音がメローネさんの頭上を掠めるとベネッ!と鳴き声のような何かが漏れる。
面白い。面白いけれど....

「あの、メローネさんそろそろ腕をどかしていただけませんかね...」
「えー」
「えーじゃないですよ、動けないんで」

しぶしぶ腕を離してくれた。いや、別に面倒だとは思ってない。断じて。




それから少しして、皆さんがお外に行かれた後は洗い物を片付けねばならない。
この時期は寒いしあまり手を水に浸したくはないのだけれど。ここに置いてもらっている以上文句は言えない。

「ふんふふーふんふんふー」

少しでもモチベーションを上げようと流行りの曲を口ずさんでみる。解る所だけだけど。

「だーれだ」
「!?」

大きめの皿に手を付けようとした時いきなり視界は遮られた。
突然のことでお皿を落としそうになったけどなんとか死守。割ったらどうしてくれるんだ。

「メローネさん、邪魔しないでくださいよ...」
「あれ、なんでバレちゃったんだろ」

彼はぱっと手を離しておどけてみせるけど正直こっちは割とイライラしていた。
朝から何かしらスキンシップを計ってくるのは毎度の事だけれどここまで作業を邪魔されるのは初めてである。次邪魔したらその綺麗な顔に一発ぶち込んでやろうかと失礼ながらも考えていると、彼の腕が首ではなく、今度は腰に回ってきた。この野郎相当私を怒らせたいらしい。

右ストレート決めてやろうと構えたのと同時に首の辺りに顔が埋められた。ハニーブロンドの髪がくすぐったい。

「えへへ〜」
「気持ち悪い声出さないでくださいよ、お皿割るところだったじゃないですか」
「怒った?」
「ええもちろん」

首をこてんと傾け私の顔を覗き込む仕草をしてみせるがそんなんで落ちる女だと思われちゃ困る。
半ば乱暴に答えもう一度シンクに向き直ると今度は耳元に息を吹きかけられた。この色男が調子に乗りやがって。

「右ストレートとアッパーとジャブどれがいいですか選ばせてあげます今なら鼻フックもセットですよ光栄に思えください」
「そんな名前もベネ!」
「フルコースがお望みかド変態土に還れ」

おっと本音が。
まあ謝る気はさらさらないけどね!

「ねえ名前、俺暇なんだ」
「そうですか街の子でもナンパしてきたらどうですか」
「さっきしたけどぶたれちゃった」
「ああだからほっぺ赤いんですねお大事に」
「ねえなんでぶたれたか気にならない?」
「ならないから邪魔すんなよ」

だんだん口調が荒くなってくるのは自覚済みである。

「俺の話きいてよ」
「勝手に喋ってれば」
「...」
「...」

なんなんだろうか。構ってほしいのか。遊んでるだけか。
後者ならさっきのフルコースをお見舞いしてやろうと思う。

「...いきなり黙んないでくださいよ、何したいんですか」
「んーそうだな、強いて言うなら構ってほしいかな」

割とアッサリ答えられてしまった。なんか殴る気失せて来た。
イケメンは何でも許されるという魔法は健在なのだろうか。ずるいぞそんなの。

「俺がその洗い物手伝ったら、俺の話聞いてくれる?」

あぁもう、突然優しくするとか、そんな甘い声で囁いて来るとか、反則じゃないのか。
私の返事が解っててそう言うのか。策士か。


「....はぁ、仕方ないですね。
シエスタも兼ねてこの名前様が聞いてやりますよ。」


これだからイタリア男は!












+++++
市野様へ捧げる相互記念文です。
構ってちゃんメローネということでしたが、こんな感じでよろしかったでしょうか...
以前私の書く幸せで楽しい文が新鮮と仰ってくださったようなので割と平和な感じにしてみました。
変に長くなってしまってどうも読みづらくなってしまいました。すいません。

何か問題があればフォームメールよりどうぞ。
お持ち帰りは市野様のみとさせていただきます。
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