「おじいちゃんとする球技はなーんだ」

「ソフトボール、だろ」

試行錯誤しながら考えた渾身のなぞなぞを間髪いれずにで両断した目の前の男が憎らしい。

今日はいつもにまして客足が過疎状態で、いよいよこの事務所の悪質なタレコミが広がって世間に見放されたかと思ったが、敢えて口には出さない。

なんだか師匠が惨めになり、客が来るまでの時間稼ぎにわざわざ気を遣ってこんな子供だましな手法を使っているというのに。

「うぐ…師匠ってば答えるの早すぎません?」

「オイオイ、俺を誰だと思ってるんだよ、なまえちゃん?俺は偉大な霊能力者だぞ」

霊能力者に頭の回転の早さはこの際関係無いだろう。
答えになっていない言葉を並べ立てて、堂々と胸を張る師匠に掛ける言葉さえ見失う。

そもそも思いっきり嫌味を込めたつもりだったが、どうやら細胞の根っこからおめでたい思考の持ち主であるこの男には通用しないらしい。

「師匠のことだから、どうせ最初から知ってた問題だったんでしょ」

「うっ…そ、そんな訳ねぇだろ。なまえは相変わらず手厳しいな」

やけに上擦った声と泳ぐ目が何よりの真実である、この卑怯者め。

せっかくの日曜日だというのに友人とのショッピングも断り、閉鎖的かつカビ臭い事務所にわざわざ出向いてやっている身にもなって欲しい。

そもそも、なんだかんだ言って師匠の元に素直に足を運んでしまうのは、多少なりとも師匠を意識しているわけで。
つくづく惚れた弱味というやつだ。

「ふうん…まぁ、いいですけど。」

「そ、そうか!じゃあ今度は俺からなまえに何か問題だしてやるよ」

「はぁ、あんまり難しくないのにしてくださいね」

それ以上その話題には食いついてこなかった私にホッとした様子の師匠はすぐさま話題を切り替えた。
まぁ、師匠の困ってる顔が見れたし良しとする。

わざとらしく顎に手を当てて考える素振りをとった師匠は、ようやく思い付いたらしくハッとした後だらしなく口元を歪ませた。
間違いない、あの顔は何かを企んでいる表情だ。
どうせ解けなかったら缶コーヒーおごり、とか自分に有利なルールを付ける気だろう。
大人げない大人に付き合う身にもなってもらいたい。

「たたたあたたたたたいたたたたしたたてたたたるたたたたた」

「…な、何それ。ちゃんとした問題ですよね?」

「なんだ、俺がこんなにアプローチしてるのに分かんないのか?」

「アプローチ…?問題と何の関係があるんです」

「しょうがねぇな、ヒントやるか。なまえも聞いたことあるだろ、たぬきだよ」

「た、たぬき…あっ!う、嘘だ。そんな…」

「それ、なまえに対する俺の気持ちだから」

ふいっとそっぽを向いた師匠の頬は柄にもなく赤かった。
そんなに恥ずかしいならそんな問題出さなきゃいいのに、つくづく可愛い人だ。

ちゃんと言葉に出してください、と広い背中に声を掛けると逞しい腕が背中に回ってくる。
恥ずかしいだろ、バカヤロー、なんてああ。もう、やっぱり師匠は目が離せない。


(たたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたた)




*




たくま様へ捧げます!
お、遅くなってしまい失礼しました…ひいいいい

霊幻師匠といちゃらぶということだったんですが、書き上げた後となっては完全にいちゃらぶというより甘いだけの代物と化しておりました。いちゃとらぶはいったい何処へ…?
こんな稚拙なものではございますが、少しでもお気に召して頂けたら幸いです。

それではリクエストありがとうございました!
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