!注意!

・悪の華で論破2のなんちゃってパロディ
・あまりにも今週回(六話目)のアニメ版悪の華での中村さんと春日くんのやり取りがドツボだったので、勢い余って男主と狛枝くんに置き換えて一部パロディなるものを書き散らかしてしまいました。
・配役は春日くん→男主、中村さん→狛枝、佐伯さん(名前のみ)→日向の完全ドロドロオホモな感じ。



(「日向クンはね、キミとセックスしたくてたまらないんだよ」)

狛枝の柘榴のように赤い舌が誘うように蠢く様が、ただただ恐ろしかった。
ボクが日向くんのドロドロなところ曝け出してあげる、乱暴に捕まれた腕の中でうっそりと歪んだ端整な顔が俺の脳裏には今も鮮明に焼き付いていた。

多分でまかせなのだろう。どうせ狛枝のことだし、焦る俺を見てひっそりとほくそ笑んでいるに違いない。
・・・違いないのに、思春期男子の心理は実に単純明快だ。気付けば脳内は青臭い性事情でいっぱいだった。

もし狛枝の言っていることが本当であったなら、いやでもあんな快活で清廉潔白な日向創が淫らに体をくねらせて自身を誘うはずがない。
さながら原子爆弾級の破壊力を持った狛枝の一言により悩ましい一夜をやり過ごした次の日、 まるで見計らったようなタイミングで日向は学校に姿を見せなかった。

正直、寂しいと思った反面安堵さえ覚えた。きっと今日向の顔を見たら自分のなけなしの理性がいとも容易く解れてしまいそうだった。
出来れば今日は狛枝のことも極力避けていきたい。まるで日向と付き合う前までの荒波を立てない静かな生活が戻ってきたようだった。

『残念だな、愛しの日向は今日休みかー。浮気すんなよ色男!』

三日月形の唇を大きく開いてケタケタと笑う左右田のデリカシーの無さを今日ほど恨んだことはない。そんなんだから愛しのソニアさんが振り向かないんだよ、アホ。

それからはとにかく退屈な授業を受けて左右田と二人で味気ない弁当を囲み、眠気と必死に格闘しながら午後の授業を終える。
実につまらない一日だった。でもそんな一日で終わってくれていたらどんなに良かったか。
不覚にも俺たちがクラス公認のカップルな為に、変な方向に気を利かせたクラスの面々が日向のプリントを俺に差し出してきたのだ。

(絶対喜ぶから届けてあげなよ!)(間違っても寝込み襲うなよー)

きゃあきゃあと甲高い声で喜ぶ女子達とからかいじみた声音で小突いてくる男子共の楽しそうな姿が重く圧し掛かる。
日向と掘られた表札の前に立ちはだかって早数十分が経過していた。まさかこんなことになるなんて今日は厄日らしい。

(「俺達、大事に付き合っていこうな」)
(「日向クンのこと好きならパックリ全部見なよ」)

照れくさそうにはにかんだ日向の眩しい笑顔と狛枝の蠱惑的な厭らしい笑みがぐちゃぐちゃに混ざり合う。
大丈夫、手紙を渡すだけじゃないか。俺はけして疚しくない。
そう自分に言い聞かせながらチャイムに指を乗せてはみたが、体は思考を凌駕して素直で動悸と冷や汗が止まらない。

「やぁ、さっそく日向クンとセックスしにきたのかい?」

「なっ・・・狛枝!」

聞きなれた甘いテノールの声音に身の毛がぶるりとよだつ。
何で、嘘だろ。何でこのタイミングで来るんだよ。何で俺が此処に来ることを知ってるんだ。何で、なんで。
視界の端で揺らめく柔らかな真っ白い髪に目の前が真っ暗になった。

いつものように貼り付けた笑みを端正な顔にゆるりと浮かべた狛枝凪斗がそこにいた。

「日向クンがヤリたがってるって分かったからすぐ家に来ちゃうんだね」

「ッ・・・オイ、これ以上日向を侮辱したら許さない」

情けなく尻もちをついて固まる俺を狛枝はひどく楽しげな様子で見下ろしてくる。
深いエメラルドグリーンの瞳に吸い込まれてしまいそうだ。この瞳は全て自分の中の醜いものを見透かしているようで苦手だ。
そうやって今も見透かしたような辛辣な言葉で俺を苦しめるのだ。

「侮辱?嫌だなぁ、そんなわけないじゃないか」

「絶対ウソだろ・・・ッ、日向がセックスなんてアイツへの冒涜だ・・・!」

「本当だよ。日向クンはセックスしたくてたまらないっていうのに冒涜なんて・・・それともただのセックスには興味無いの?」

わざわざ腰を折って視線を合わせてきた狛枝の嬉しそうな瞳と視線がぶつかった。
そうだ、この顔を俺は知っているじゃないか。狛枝は、今の俺に希望を見出している。
俺が絶望するほど狛枝の希望は大きくぶくぶくに肥えていくのだ。

「ッ・・・こ、狛枝!」

「ハハッ・・・それこそ絶望的だよ、キミは変態野郎の王様だね」

あまりにも酷い狛枝の言い草に俺の堪忍袋の緒ももう限界だった。
ふるふると言い様のない怒りに震えていると、突然襟元を掴まれて狛枝の方へ引き寄せられた。
一瞬のことに頭が回らず、ポカンと惚けたアホ面をしているであろう自分とは対照的にトロンと蕩けた恍惚的な顔を浮かべた狛枝との距離感は気付けばキスが出来るところまで迫っていた。

冷静に考えてみれば此処は恋人の家の目の前で、そんな人様の敷地で俺達は何をしているんだろう。
一歩間違えればこれは立派な二股、不順異性交遊のまっさかりだ。
でもそんなことを分析している余裕なんて今の俺には毛頭なかったのだ。

「鏡で自分をよく見なよ。僕には見えてるけどな、キミの皮の中のドロドロ全部」

唇と唇がぶつかりそうなもどかしい距離で優しく甘く呟いた狛枝の言葉は酷く的を得ていたと思う。
俺には結局大事に付き合うなんて普通の清い交際が出来るわけもなかったんだ。狛枝凪斗がいる限り。おれがどうしようもない変態ヤローだから。

俺はきっとこの先も普通に戻ることなんて出来ないだろう。
そんな俺に追い討ちを掛けるように耳元で囁いた狛枝の言葉は酷く、甘かった。

(「頑張って」)







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