君と私の物語 | ナノ




空に飾られる眩い太陽。雲一つない透き通った青い空。それは快晴と云う名に相応しい天候。冬にしちゃ随分とぽかぽか陽気だ。
芝生をギュッと踏む度に、独特の香りに包み込まれる。平日だからか、周囲は休日に比べたら人が少なくひっそりとしていた。あれからまともに外出をしたのはこれが初めてな気がする。勿論、ちゃんと単位を修得する為に大学には行っている。何時までもくよくよしているのは自分自身に対して許せなかったから。あれから大学で会った直後に、酷く謝られた。それでも尊敬していた気持ちは何処かに存在していたからか、すんなりと大丈夫ですと口にしていた。ただ、それでも一度身に染みた恐怖心は垢のようになかなか消えない。夜道が、男の人が怖い。でも、そんな気持ちを和らげてくれたのは彼だった。それは、あの日から翌々日のこと。帰宅時、駅のホームを出たら彼が待っていたのだ。それから、一緒に帰宅するのが日常化されてきたのだ。


「なんか変な感じ」
「あ?」

「デイダラがこんな天気良い日に外にいるから」
「今まで滅多に昼間から外に出なかったからな、うん」
「誘って正解」

家から近いこの公園は何処にでもあるような公園とは違い、広く辺り一帯鮮やかな緑色で囲まれている。遠くで子どものトーンであろう声が耳に届く。近くの焦茶のベンチに腰掛け、遠くで犬の散歩をしている人や親子が散歩しているのを眺める。


「しかし本当にこの世界は不思議だ。でかい鉄が走ってるし木が全然ねぇと思ったら、こんなとこあるしよ」
「デイダラが居た場所はやっぱり全然違うの?」
「違うぞ。里によって違うが、それ以外は森だらけでやたらと甘味処があんだよ、うん」
「甘味処…団子とか?」
「そうだな」

想像を膨らますと、よくテレビで放映されている時代物の団子屋のビジョンが浮かんだ。言葉で説明したところで想像することしかできず、あくまでも実際に見れるわけじゃない。けれど今まで話を聞いている限り、やはり文化や社会などほとんどの背景は此方とは異なるようだ。それは会った当初から既知していたはずのに、話を聞く度に再度思い知らされる。彼と私はやはり違い、何処かしらに隔たりがあるのだろう、と。それは当たり前なのかもしれない。私はどこにでもいるただの平凡な美大生。彼は忍で謀叛を犯し、何人も殺めている犯罪者。

けれどそんなことよりも彼の優しさを垣間見たら、とても不恰好で。何より温かかった。


「あ、デイダラが好きなのっておでんのばくだんって前言ってたよね?」
「言った気がする、うん」
「じゃあ今日の夜ご飯はおでんにしよ」
「そりゃ腹空かしとかないといけねーな」
「帰りスーパー寄って行こ」

白滝とはんぺん、大根、昆布に卵と竹輪。それと沢山彼の大好物のおでんのばくだんを鍋に入れよう。
今度晴れた日もまた何処かに出掛けたいな、なんて青空に馳せる。木漏れ日がキラキラと輝き、それと似たように自分の心も輝いていた。




今日の快晴はあまりにも眩しすぎた。