decalcomanie | ナノ

どうしたって敵わない



話に花が咲き(特にデイダラ先輩だったけど)気が付いたら既に四時間目に突入していた。サボる予定じゃなかったし、こんなにサボってしまうのは始めてで私は時計を見て驚きのあまりポカーンとしてしまった。だって四時間目はあの恐ろしいでとても有名なイビキ先生の授業なのに。絶対に怒られる、と言うか恐すぎるっ何されるか分かんない!そんな私の間の抜けた姿を見てか、デイダラ先輩は笑っていた。デイダラ先輩と言えば、特に四時間目に入ったことに驚きも焦りもなく先程と変わる様子は全くなかった。そして、四時間目も終わり数分話を交わしてからデイダラ先輩と別れ、自分の教室へと急ぎ足で向かった。きっと一緒にご飯を食べているテンテンやマツリちゃん達は先に購買に行ってるはず。そう思いながら、教室に入ると予想外なことに幾つかの机をくっつけて、お弁当を広げて食べているテンテンやマツリちゃん、ヒナタがいた。
このメンバーは一緒にいて落ち着く。マツリちゃんは我愛羅君、ヒナタはナルトのことが好きだけど、あの暁のことを好きな人は居ないし際立って皆目立っていないから(悪い意味ではなく良い意味で)

「透子、何してたのよー?」
「ごめん!」
「弁当持ってきてないんでしょ?早く購買に行ってきなよ」

テンテン、マツリちゃんが口に頬張りながらも私に話掛ける。そうだ、購買!きっとこの時間じゃ売れ残りしかなさそうだな(なんてたって、購買は戦争だから)日替り弁当ならまだあったよ、とヒナタが控え目に答え、ありがとうとぶっきらぼうに答えてバックから財布を取りだし早足で購買に向かう。階段を降りて、廊下を歩くと購買に着いた。さすがにこの時間帯は人は少なく、売っているのも不人気なものだけ。チョウジ君だけは未だに買い漁っている。どうしよ、オカズ類は売り切れみたい。不人気である混ぜご飯は売れ残ってるけどオカズないから、迷うなあ。パンにしようかな。


「…あ!日替り弁当!」

パンにしようとパンが売っている所に行こうとしたら、視線の先には一個だけ売れ残ってる日替り弁当が。まだ残ってるなんて奇跡に近い。素早く手を動かしてそれを取ろうとした直後、隣から手が伸びてきた。それは明らかに日替り弁当を取ろうとしていたのか、ピタリとお互い手の動きを止める。お願いだから譲って下さい。そう懇願しながら、その人を見据えた。


「………あ」

目の前には制服をルーズに着こなしていてフワフワな赤い髪で整った顔でかっこいいけど怖そうな人。あれ、何処かで見たことあるような。思考して一時停止をしていると、その人は麻痺れを切らしたのかおい、と催促してきた。

「あ、日替り弁当譲って下さい!」「お前、もしかしてデイダラと一緒にサボってた女か?」

「………え?」

ほぼ同時にお互い声を出して、彼の発言に素頓狂な声をあげる。そして目の前の赤髪の人は日替り弁当なら譲ってやる、と日替り弁当を渡された。この人、案外優しいのかも。あれ、でも今…。なんで、デイダラ先輩とサボっていたことをこの人は知ってるの?脳裏に過るのは、デイダラ先輩と出会ったあの事故の時。確か、あの時あたしはサソリ先輩と間違って。そうだ、この赤髪は紛れもなくサソリ先輩。漸く答えが導かれ、案の定また私は言葉を失った。まさか、この一日で暁の二人目と関わってしまうなんて。

「…ひ、人違いだと思います」

いつかはバレるだろうけど、とりあえず嘘を吐いた。此処で、はいそうです、だなんて正直に言ったらこの後どうされるか分からない(それをさっき思い知ったから)とりあえず、お礼を言って日替り弁当を買ってさっさと立ち去ろう。財布から小銭を出そうとすると、背後から旦那ー、と誰かが叫んだ。

あれ、この声はまさか…。


「勝手に行くなんてひでぇじゃねーか。大変だったんだぞ…って、早水?」
「あれ、早水さんじゃないっスか」

「…ど、どーも」

振り向けば数十分前に別れたデイダラ先輩と同じクラスのトビがいた。つまり、これではあたしが嘘を吐いた意味が全く意味がなくなった訳で。結局サソリ先輩にバレてしまったということだ。イビキ先生程じゃないけど、なんか怖い。

「やっぱりお前がデイダラが言ってた女か」
「…すみません」
「なんだ?サソリの旦那と何かあったのか?うん?」
「いや、特に何もないですよ」
「デイダラ先輩、いつの間に早水さんと仲良くなってたんですか?」
「まぁな」
「デイダラ、トビ。さっさと買って行くぞ。オレは人を待たせるのも嫌いなんだ」

サソリ先輩は売れ残りのパンをいくつか無作為に選んで買っていた。とりあえず、私もこの日替り弁当を買って早くこの場から立ち去ろう。デイダラ先輩がトビにあの事を言ってないか少しだけ不安だけれど、とても居づらいのでそっちが最優先だ。

「そうだ、早水も一緒に食おうぜ、うん」
「えぇっ?!」
「デイダラ先輩、大胆スね」
「うっせーぞ、トビ。なぁ、いいだろ、旦那?」
「…勝手にしろ」
「でも、私友達と食べるんで」
「それならしょうがねーか」
「でも、もう食べてましたよ」

トビの奴、余計なことをっ!
デイダラ先輩を一瞥すれば、案の定デイダラ先輩はニッと笑顔を浮かべていた。要するに、私にはもう選択する余地はないということで。じゃあ一緒に食おうぜ、うん、とデイダラ先輩は暢気に答えた。その独自なペースにまた私は飲まれていく。



(げっ、やっぱ混ぜご飯しか売ってねぇ)(先輩、ドンマーイ)(オイラ、混ぜご飯だけは絶対無理、うん!)