空から落ちた少女 「んーっ!気持ちいい」 ごろんと寝っ転がり、両手足を広げ、羽を伸ばす。視界を上へと写せば、空色一色。其処には真っ白な大きい入道雲。この絶妙な色合いが素敵。まるで、今空を飛んでいる様。陽射しは強く注がれ、八月が終わったというのに未だに蝉が煩く音色を奏でている。 「…ふぅ」 現在休み時間中。屋上で一人。マンモス校である我が校は、幾つか校舎が連なっている。その中で一番利用せず、資料室や倉庫が主な校舎。利用されるのは、一階の涼しくて大きな図書室くらいだろう。そんな校舎の屋上は、ひっそりとしていて空虚。ある意味ベストスポット。こうして私はたまにふらりと此処に訪れて、ただ空を眺めたり居眠りをする。その所為で何度か授業をすっぽかしたのはいけないことだけれど。 「…暑い」 やっぱりまだまだ夏!残暑とは言えど、この強い陽射しと蝉の煩さで暑さは二倍だ。じわりと汗が滲むのを嫌ってくらいに感じられる。 「もう中に入ろうかな」 独り言を自分に言い返し、立ち上がる。やっぱりこの暑さは熱中症か脱水症になる。こんな所で、野垂れ死になるのは御免だ。 鈍光りする金属製の梯子にそっと足を掛ける。今居る所は屋上の更にもう一つ、梯子から登れば更に高く辺りを見渡せる所。両足を掛けて、慎重に下の棒に片足を掛け、次に手を動かす。 「あ、青」 不意に、下から低いトーンの声が聞こえた気がした。私は下がっている状態のままストップして、ゆっくり首を動かし下を見据えた。其処には、何よりも目に止まりやすい黄色が。太陽の光のお陰で眩しくて、顔はよく伺えない。だが、此方を下から眺めている。その時生温い風がふわりと吹いた。スカートが揺れ、肌にくっつく。ベタついて気持ち悪さが催す。 スカート? …青? 「っ、変態!」 青、という意味を漸く理解した途端そう叫んでしまった。直後、梯子に掴んでいた手がツルッと滑り落ちふわりと身体が宙に舞う感覚に陥る。瞳に写るのは真っ青な空。まるでスローモーションかのように、ゆっくりゆっくりと下降していくのが解った。今落ちているのだと。 あぁ、落ちたら無傷じゃないだろうな。痛いし、多分打撲とかしそうだし。 「ぎゃあ!」 ドサリ。鈍い音と共に自然に変な叫びを口にした。あー、痛い! ………あれ?痛くない。何で?目をぱちくりさせて、ボーッと落ちた体勢のまま視界に広がる青空を眺める。その時、下から低い呻き声が聞こえた。 「お、おい……早く退けよ、うん」 「えっ?!」 その声の主のおかげで私は敏感に反応して、瞬時に身体を起き上げた。大変なことをしてしまった。というか、なんかもうここは謝るしかない! 「ごごごご、ごめんなさいっ!!」 どうやら、やはり私は落ちてしまったようだ。しかも、最悪なのか良かったのか。とにかく落ちてしまった。 黄色の人の上に。 |