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極彩飾の渦の中




「待たせたな」

漸く生徒会長室に着くと、そこには既にイタチ、鬼鮫、生徒会長、小南がいた。メンバーが欠けているが、つまりこのメンバー達で暁と呼ばれていたりしている。生徒会長であるペインは生徒会長の印であろう周りのパイプ椅子よりはリッチな椅子に座って暇なのかクルクルずっと回っていて、他の奴等もその周りに座っていて弁当やらを広げて食事の真っ最中。オレに続き、トビが中に入りデイダラと例の女は何故か入ってこないでいる。勿論、何も知らないメンバーは訝しそうに開きっぱなしの扉を終始眺めている。

「早く入れよ」
「やっぱ、帰ります。この日替り弁当と混ぜご飯交換してあげるんで」
「ありがたく受け取ってやるよ。けど今更帰るなよ、うん」
「あ、私の日替り弁当!」
「ヘヘッ、ありがとな」
「うわ、デイダラ先輩!」

入室するのに躊躇する女と必死に入れようとするデイダラの声が、交互に繰り返されているのが耳に自棄に届いてきた。ったく、あいつらこの期に及んで何やってるんだ。呆れるしかできないでいるオレに対し、生徒会長はなんだなんだ、と目をキラキラと輝かせている(…ガキかよ)他の奴等といえば、イタチは既に気にも留めず無頓着でおにぎりとキャベツを黙々と交互に頬張っていたり、鬼鮫はチラチラと扉に視線を移しながら机を拭いていたりしている。
その時「早水!」と、デイダラが喝を入れるような叫びが聞こえると、女が奇声を挙げながら、体勢を崩してこの室内に入り込んできた。その後に続いてデイダラも飄々と入室してきた。女は四方八方に目を動かし一人一人を眺めてから、ゴニョゴニョと何か呟いている。周りは女じゃないですか、しかも一年だぞとかやっと入ってきたんスかとか何を口にしてるのか分からなかったり、とにかく噪き始めていた。

「……えーと」

「あ、こいつオイラの「デイダラ、彼女できたのか?!デイダラに女ができるのは久々だなーめでたいめでたいっ!今日はパーティーだな」
「ええぇぇええ!?デイダラ先輩、実は早水さんとそんな関係だったんスか?」
「にゃんふぇんふ」
「イタチさん、食べながら喋らないで下さい。ご飯粒溢してますよ」
「で、先輩達いつから付き合ってたんですか?」


「…あ、あの全く違います。付き合ってないです」
「か、勘違いすんなよ、うん!こいつはオイラの……友達というか知り合いだ」

勝手にめでたいめでたい!今日はパーティーだと騒ぐ生徒会長やトビに、漸く訂正する女は著しい程に苦笑を浮かべていて、デイダラも続いてちげぇぞと慌てながら答えている。それに対し、えー、とあからさまに拙そうなトーンで発する生徒会長。フンッと鼻で笑うイタチに紛らわしいですよーと何だかんだ楽しんでるトビ。
そんな中、佇立している女にいきなり手を差し伸べたのは小南。意外なことなのか、一同騒然。勿論、女も目をパチクリさせて呆然としている。


「三年の小南よ、よろしく。周りがかなり五月蝿くて悪いわね」

「…あ、大丈夫です。私は一年の早水透子です。よろしくお願いします」

それから二人は握手を交わし、数分会話をしていた。それから小南に続いて、生徒会長イタチ鬼鮫が順に簡単な自己紹介をし始めた。オレは椅子に座り、静かにパンを食い始め客観的に周りを傍観。そういえば飛段がいねぇがどうしたんだ、とふと脳裏に過ったがあいつのことだ。大抵居ない時はそこらの女と一緒に飯を食っているのだろう。しかし、デイダラが言っていたこの女。確かに不思議だ。妙にどこか抜けてるし、この学校の中にしては異色な方。今この女の立場を違う女に置き換えてみたら、紛れもなく耳が壊れそうなくらいうっせー声を出すはず。確かにこの女も突然なことにあたふたしているが、オレ等とは一線を越えないようにしているのは言動から伺えられる。つまり、この女は本当はこの状況やこの中にいることが嫌なんじゃないだろうか?デイダラが女の細やかな心中に気付く訳がないだろうし、この女自身断るってことはやはり無理なのだろう。冷静にかつ炯眼で見渡し、思考していると隣にデイダラが座り何故か日替り弁当とレモンティーのパックを机に置いた(あの女、オレがせっかく譲ってやったのに…)

「旦那もさっき会ったけど、早水に一応自己紹介しろよ」
「なんでだよ」
「噂してたらちょうどあいつに会えたんだぜ、うん」

「……噂って、デイダラ先輩もしかしてっ!?」

過敏にデイダラの言葉に反応し顔を歪ませる女はデイダラのとこまでやって来て、大丈夫だ、とかひそひそと何かをオレに背中を向けて話し合い始めた。そんな二人に生徒会長は何度か頷いた後「青春だねー、とりあえず暁にようこそ!」と一人でハイテンション。くだらねぇ。それでも、久々にデイダラが女に対して興味を示し楽しそうにしてる(というかあの二人、主従みたいだけどな)もしかしたらデイダラはこの風変わりな女に恋をするのではと予感をした。



(デイダラ、てめぇ何弁当交換してんだよ)(あいつがいいって言ったんだ)(…ったく)(オイラが混ぜご飯嫌いなの知ってるだろ!)