自惚れてもいいですか




窓際、一番後ろの席。席替えの日のくじ運が偶然よかったらしく、そんな特等席を引き当てることができた。先生の目から逃れられる席ということもあるけれど、何よりこの席はグラウンドがよく見えるのだ。

お目当ては同級生の倉持洋一くん。そして今日、この時間に体育があるのは彼のいるB組だ。
今日はサッカーらしい。いくつかのチームに別れて試合をするらしく、彼のいるチームは今から一試合目のようだ。足が速いのは野球部の試合を何度も観に行っているから知っているけれど、彼は運動神経も抜群で。

──きらきらしてる。

ボールを蹴る姿も、走っているときの姿も、表情も。どれもこれもきらきらしていて眩しい。
野球の試合のときも、いつもきらきらしてるもんなぁ。格好いいなぁ。
そんなことを思いながら見つめるけれど、彼と言葉を交わしたことなんて、数える程度だった。それも、野球部のマネージャーである唯や幸子と話していたときに偶然通った彼を巻き込んでとか、野球部の1年生の沢村くんに落とし物を届けたときに彼が一緒にいたからとか。倉持くんに認識されているのかも分からないくらいなのだ。

──わ、ゴール決めた!

倉持くんの蹴ったボールが、ゴールに吸い込まれていった。自分のことみたいに嬉しくて、なんなら拍手して応援したくなるくらいだ。授業中だし、こっちは体育の授業ではないからできないけれど。
すごいなぁ、格好いいなぁと思いながら見つめていると、倉持くんがこちらを見て。ぱちりと、目が合った。

「っ、」

偶然目が合っただけだと思ったのだけれど。視線を外せずにいると、彼がにっと笑って、こちらに向けて拳をつき出してきた。
どきりと心臓が跳ねたけれど、私に向けてではないかもしれないと思って。周りを見てみても、みんな授業に集中しているようでグラウンドの方は見ていない。

──本当に?

驚いたまま拳を作って彼の方へ向けてみれば、満足げな笑顔が返ってきた。間違っていなかったことへの安堵と、認識されていたことへの嬉しさと、少ししか話していない私に対しても分け隔てなく接してくれる彼への想いと。そして、ずっと見つめていたことがバレてしまっていたのではという恥ずかしさと。いろんなものがないまぜになって、それでも嬉しさが勝って。
緩む頬を抑えられなくて、口元を両手で隠しながらグラウンドの方を見れば、倉持くんが同じクラスの御幸くんにからかわれているところだった。


title by icca


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