刻まれる赤




※狗巻視点。狗巻の一人称、同級生の呼び方、口調捏造あり。

「まーき!」
「げっ」

人目を憚らず抱きつく名前と物凄く嫌そうな顔をする真希。周りに同級生がいるのによくもまあ、と思いながら傍観に徹する。

「彼氏にその反応はひどくね?」
「ひどくねぇよ。鬱陶しいから離れろ」
「えー、昨日はあんなに素直でかわい、っと!」
「デケェ声で言うんじゃねぇ! 死ね!」

相変わらずデリカシーのない発言をするなぁなんて思っていると、真希から蹴りが入る。それを軽く受け止めてにこにこと笑う名前。あの真希の蹴りを平然と受け止めるだけでもすごいのに、いとも容易くそれをやってのけたうえに笑いながら彼女の足をするりと撫でて「いい足」と呟いていて。最初にこの光景を見たときは名前のことを化け物か何かかと思ったのだけれど、最近は見慣れてしまったどころか呆れて溜め息を吐いてしまう。俺の隣にいるパンダも呆れ顔だ。

「ツンツンしてる真希もかわいい」
「あーもう、分かったから離れろ」
「やだ、離れたら死んじゃう」
「そんなんで死んでたまるか」

ぐいぐいと名前の肩を押しているけれど、びくともしない。真希がここまで全力でやっても敵わないのだ。相変わらずいろんな意味でやばい奴だなと思う。普段はいい奴なのだけれど、真希が絡むと一気に関わりたくない奴になるのだ。

「あ、そうだ。これあげる」
「あ? 何だこれ……口紅?」

高級そうな箱の中から取り出したのは口紅で。真希の手からそれを奪って、顎を掬ってから彼女の唇に紅を引く。慣れた手つきが逆に怖い。けれど色は真希によく似合っていて、センスはいいんだよなぁとぼんやりと見つめていると。

「うん、やっぱり似合う。かわいい」
「っ!? ストップストップ! 何して、」

真希を見つめながら顔を近づけていくからまさかとは思ったけれど、やはりキスをしようとしていたらしい。俺たちが見ていてもお構い無しな名前と、見られているから止めにかかる真希。名前の口を手で塞いでなんとか止めたのだけれど、彼はにやりと笑って。次の瞬間、真希が小さく悲鳴をあげて彼の口元から手を退けた。何が起こったのかこちらからは見えなかったけれど、おそらく口を塞いでいた手を舐めたのだろう。名前ならやりかねない。

「んんー! ん、ぅ」

その隙に真希の唇を奪って舌まで入れていて。真希も大変だなと思っていると、彼女は名前の急所を思い切り蹴り上げた。これはさすがに名前も予想外だったらしくその場に蹲る。

「ッ〜〜、ひっでぇ、」
「人前でやるなっていつも言ってんだろ。聞かねぇお前が悪い」
「使い物にならなくなったらどうしてくれんの。困るのは真希だぞ?」
「もう一回デリカシーってもんを学び直してこい!」

ブチキレた真希は蹲る名前の頭に拳骨を一発入れてから教室を出て行った。相当痛かったらしい名前は小さく呻いていて。それでも、これは擁護できない。

「こんぶ」
「そうだな、名前が悪い」
「お前らもひでぇな」

顔をあげた名前の唇には、真希から移った紅が残っていた。


title by Ruca


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