保護

スターフィッシュイーターvsシップフォックス 3

前の話


 昼を迎え、船上での昼食を終えた頃になると彼は現れる。
 操縦席下にあるバケツとビニール袋を確認した後、甲板にいる徐倫を窺う。彼女は陸を眺めては、貨物船倉庫の方へ視線を移すを繰り返している。そろそろいつもの時間だけに落ち着かないのだろう。かく言う俺も奥で作業をしながら時折外を確認する辺り、どこか浮ついてるのかもしれない。
「かきょーいん!」
「やあ、徐倫」
 奥の作業部屋へ戻ろうとして、聞こえてきた声に再び視線を甲板へ戻した。
 海沿い特有の強風に靡くのは日本人にしては明るい色合いの赤毛と、それに反して地味な深緑ながら目を惹く長い学生服。操縦席から外に出ればこちらに気付いたのか、ひらりと手を振ってきた。
「こんにちは承太郎。仕事は捗ってますか?」
「ぼちぼちな」
 先日魚を探しに来たのがきっかけで出会った花京院典明という高校生は最近ではここの常連となりつつある。そんな花京院は甲板へ乗り込むと徐倫へ木の枝を渡す。
「かきょーいん、これなに?」
「アカシアという木の枝だよ。蕾がついていたからお土産に持ってきたんだ、ちゃんと水と栄養をあげると葉や根が出て綺麗な花も咲くよ」
「ほんと!? ダディダディ! もいっこかびんあったよね? それに入れてあげないと!」
「そう急かすな、今出してくる」
 花京院は昼過ぎに港へ現れては魚を探しにくる少々奇妙な学生で、時折こうして手土産に徐倫が興味を惹かれそうな木の実や花の蕾を持ってくる。この間はコブシの花の蕾がついた枝を持ってきたな。あのふわふわとした蕾は徐倫のお気に入りで、寝泊りに使っているホテルに戻ると彼女は毎日世話を焼くほどだ。
「花瓶を持ってきたぞ。この間のと違って底が深くないから、ホテルに戻ったら移し変えてやらないといけないな」
「ホテルにかびんってある?」
「貸し出してはくれるだろうが、持ち帰るつもりなら後々買う必要がある」
「じゃじゃあっよるにかびんかってねダディ」
「ああ」
 徐倫に花瓶を渡すと早速それにペットボトルの淡水を注ぎ、アカシアの枝を挿した。蕾はまだ固そうだがなかなか様になる。
「うまくいけばとてもいい香りの花が咲くよ」
「そうなんだ! ありがとうかきょーいんっ」
「いえいえ、どういたしまして」
 そんなやり取りを尻目に俺は操縦席下の袋を持ってくると、花京院の顔が僅かに赤らむ。彼がここに来る目的はこの中にあるのだ。
「今日の魚だ。あまり良いものがかかってなかったのでもう一匹おまけしてる」
「すみません、僕こそ貰いっぱなしなのにそんな気遣いしなくても……」
「一匹多くなったところでこちらにデメリットがあるわけじゃあない。遠慮するな」
「どうも、ありがとうございます。」
 そうしてはにかむように笑うので、こちらもつい被っていた帽子のつばを少し下げてしまう。整った容姿と丁寧な口調に仗助などと違って突っかかりにくいタイプかと思えば、年相応に笑うとは。
「ねえねえかきょーいん、きょうもどうぶつさんのことおしえてよ」
 アカシアを奥へ置いてきた徐倫が花京院の学生服の裾を引っ張る。その手には落書き帳と動物図鑑があった。花京院がよく来るようになって、そろそろ恒例になりつつある光景だ。
「この界隈の生き物しかわからないけど、それでもいいかい?」
「いーの! だってダディなんてみたことないおさかなとかヒトデのことしかおしえてくれないんだもん。それよりかきょーいんのはなしのほうがわかりやすいからいーの!」
「それならいいけど、今日は何を教えようかな……」
 二人は甲板に座って図鑑を囲む。花京院はこの地域の動植物に詳しく、アライグマの生態について詳しく話して以来徐倫は気になった動物がいれば彼に話を聞くようになった。
「ねえかきょーいん、かもしかってわかる?」
「かもしかか……僕は見たことないけど、話は知ってるよ。かもしかというのはね……」
 話が始まるとこれがなかなかに長く、正味三十分前後かけて行われる。耳を傾ければ詳しく話すほかに徐倫からの質問へもしっかり答えているので余計に時間がかかるのかもしれない。
 そんな様子を見つつ、俺は操縦席の奥へと移動する。あの二人は話が始まると屋内は暗いだとか言いながら中へと入らないから、何か温かいものでも用意するとしよう。徐倫は最近好んで飲んでいるアップルミルクティーに蜂蜜を入れたもので良いとして、花京院はどうするか。高校生となると好みがわかりにくい。身近な高校生である仗助とその同級生にしてもまだ子供らしく甘いのが好きな者もいれば、それこそ仗助なんかはブラックコーヒーを好んで飲んでいたりする。本人に聞くのが一番早いし確実なのだが、何かと遠慮がちな花京院のことを考えれば俺は閉口して他のフレーバーを確認する。
 無難にアップルティーのストレートでもいいか。甘くもなく苦くもなく、手持ちのフルーツフレーバーの中でも酸味が少ない。船内のガスコンロは一台しかないので、まずは徐倫のアップルミルクティーから用意するとしよう。
 牛乳を小鍋に注ぎ、中火で緩く混ぜながら耳を澄ます。すると微かに徐倫と花京院が話す声か聞こえてきた。それは穏やかでありつつどこか賑やかで、もしも兄弟がいたならこのような感じなのかと想像する。
「兄弟か」
 自身が一人っ子のため兄弟なんてものは無縁だったが、徐倫に兄弟や兄弟のように仲の良い親友がいたなら彼女にとって良いのかもしれない。
 こぽり、といつの間にか沸騰しかけていた牛乳に慌てて火を消し、用意していた茶葉をこす。
 徐倫のために親の俺が何をしてやれるのか。そうして俺はどうだったか考えて、鬱陶しいと思っていた時期もある母親と、滅多に帰ることのなかった父親を思い出す。彼らはお互いを信頼し愛し、俺を育ててくれた。特に父親がいない分も補うほどの愛情を注いでくれた母親は、子供を持った今では偉大な存在だった。母親のようには俺は決してなれないが、せめて徐倫の父親として……、
「ダディ!」
 突如至近距離で聞こえた徐倫の声に思考を深めていたことに気付く。手元に落としていた視線を少し上げれば徐倫が同じように俺の手元を覗いていた。
「やっぱりアップルミルクティーだ!かきょーいんがあまくていーにおいするっていうからダディアップルミルクティーつくってるとおもったんだー」
「外まで匂ったか」
「じょりーんはわかんなかったけどかきょーいんがおいしそうってそわそわしてたの! おはながいーんだって」
「おいしそうと言っていたのか?」
「うん、なにかわかんないけどあまくていーにおい、おいしそうだからきになるなあって」
「そうか」
 ……それなら徐倫と同じアップルミルクティーを出してみた方がいいだろうか。用意した量を確認すれば、かろうじて二人分ある程度だった。
 俺は端に置いていたカップをひとつ近くへ引き寄せると、そのカップと徐倫用の小さいカップにアップルミルクティーを注いだ。
「花京院の分は私が持って行く。徐倫は自分の分を持って行ってくれないか」
「はあい」
「熱いから気を付けるんだぞ」
「わかってるって!」
 カップを受け取ると小走りで甲板へ行く辺り、本当にわかっているのやら。思わずやれやれと呟きながら彼女のあとに続く。どうか急いだあまりカップの中身を溢して火傷なんてことはしないでくれよ。
「あっ!」
 しかし起こってほしくない物事ほど起こるというもので、徐倫が躓いて転びそうになる。
「スタープラチナ、ザ・ワールド!」
 ふわりと背後に現れた影、スタープラチナの出現と共に徐倫を含めた周囲の動きがぴたりと止まる。不自然に宙に浮いている徐倫をしっかり立たせ、今にも中身が零れそうに傾いているカップを直す。
「もういいぞスタープラチナ」
 了解したとばかりにスタープラチナが消えると微かな波音が聞こえてきた。
「……、…っ?」
「次は気を付けるんだぞ」
 不思議そうにしている徐倫にそう言ってやれば、彼女は現状を理解したらしく「大丈夫!」と声高らかにゆっくり歩き始めた。
 徐倫にはスタープラチナをはじめとしたスタンドは見えないがその存在と能力をよく理解してくれており、今も自分が何故しっかりと直立しているのもすぐわかったようだ。そんな柔軟ある感性は子供故だろうがスタンドを持つ身としては助かる。
 そっと歩いている徐倫が甲板側まで来ると、待っていた花京院が窺うように目を瞬かせた。
「徐倫、どうしたんだい?」
「アップルミルクティーもってきたのっ」
「あっぷる?」
「花京院、甘いものは好きか」
「? はい、好きですけど。」
「なら、こいつをやる。徐倫の言うアップルミルクティーだ」
「はあ、」
 普段こういうものを飲まないのか、カップを受け取った花京院はまるで犬のように鼻を近付けて匂いを確認している。そしてすぐに先ほど自身が「おいしそう」と言っていたものだと気付いたようで、ゆっくりと口をつけた。
 途端に花京院は驚いたように目を見開き、また一口飲んではぺろりと唇を舐めた。端正な容姿とはアンバランスなどこか子供じみた仕草につい俺は目を惹かれてしまう。
「これ……あっぷるみるく、てぃーでしたか……おいしい」
 また一口。まるで一気に飲み干すのが勿体ないとばかりにちびちび飲んでいる。そんな彼の頬は紅色し、口許を緩めて笑うものだからなんだか気恥ずかしくなってきた。そんな顔して飲むものじゃあないと思うんだが……。
「だってダディがつくったんだもん、おいしいにきまってるよ!」
「承太郎すごいんだね」
 そして笑みを深めるものだから俺は堪らず操縦席へと引っ込んでしまった。やはり時折見せる笑顔は年相応に子供らしくて愛らしい……いや、愛らしいは男子高校生には不適切か。
 しかし、奥に籠って作業を再開しては、微かに聴こえる花京院の声に先ほどの笑顔を思い出しては手が止まりそうになって、我ながらこいつはおかしいと首を傾げてしまった。

   ◆◆◆

 心が満たされると、日々を過ごすのがこんなに楽しいんだな。最近つくづくそう思う。
 楽しいと住まいにしている神社から港までの道のりさえ違って見えて、僕はゆっくり歩きながら道沿いを眺める。
 今日はアカシアの蕾をお土産に持って行ったけど、あれが蕾をつけるなら春先に咲く花も青くなり始めてるかもしれない。
「今日は遠回りして帰ろうかな」
 アカシアが蕾をつけるなら、あの花……椿が咲いてもいい時期である。椿なら住まう神社にもあるんだけど、あそこはそれなりに標高があって寒いせいかまだ蕾も小さい。
 神社へと続く道が目前にあるが、そこは通り過ぎて住宅街が建ち並ぶ道へと向かう。しかしそう都合よく見つからないんだよなあ。
 住宅街には様々な木々が見えるが、その中に目当ての椿はない。もう少し杜王町の近くに行けばあるかな。それこそ杜王町の真ん中にある大きな神社には椿の並木があって、時期が時期なら椿の花の絨毯ができて綺麗だと母から聞いたことがある。そこに行けば確実にあるけど、人間の姿であっても町中には極力行きたくない。
 町中はとにかく車が多く、僕ら狐を捕獲する人間もいるから危ないと聞いたから……でも目的なく探すより一度行ってみる方が早いかもしれない。うん、神社に行くだけなら大丈夫かな。多分だけど、変化はばっちりだから捕獲される危険もない。
「大丈夫、だよね」
 用事さえ終わればさっさと帰ればいいんだし、極力人間に関わらなければ大丈夫。でも神社はどこだ? 町中に神社があるのは知っているけど、それは話の中でのことで実際に行ったことはない。ううん……こんなことなら詳しく話を聞いておけば良かった。取り敢えず町中に出れば分かるかな。この界隈で一番大きな神社らしいし、近くに行けばわかるかもしれない。
「ええと、杜王町は……この先を曲がった先を……」
 記憶を頼りに向かっていると、背後から車のクラクションを鳴らされた。そのあまりの大きさに飛び上がっていると微かに聞き慣れた声が耳に届いた。この声、徐倫によく似ているような気がする。でも徐倫や承太郎はまだ港にいるはずだから違う筈だ。そう思いながら振り返れば駆け足と共にこちらに走り寄る人物に僕は声をあげた。
「徐倫じゃあないか。どうしたんだいこんなところで」
「さっきぶりかきょーいん! ダディがおしごとはかどらないってゆうからちょっとはやくかえるの」
 なんだ、そういうことか。徐倫の背後に停まる車を見れば、薄暗い車内には承太郎が乗っていた。先ほどのクラクションは承太郎が鳴らしたのか、驚いたけど知らない人間に鳴らされたのではなくて良かった。
「かきょーいんもかえるとちゅう?」
「いや。僕はちょっと用があってこれから町の方に出るんだ」
「まちって、もりおうちょう?」
「うん、そこの一番大きな神社に行こうと思ってね」
「そっか!」
 すると徐倫は承太郎の方へ振り返ると合図するように両手を挙げた。
「ダディっ、かきょーいんももりおうちょういくんだってー」
 花京院も? 彼女の言葉に何か含みあることに引っ掛かっていると、承太郎の方へ声を掛けていた徐倫が僕の手を引いてきた。
「あの、どうしたんだい?」
「さっきくるまのなかでね、ダディがいきさきおんなじならかきょーいんものせていこっかってはなしてたの! だからいっしょいこ!」
「一緒って……僕も車に乗るのかい?」
「うん。じょりーんとダディ、これからもりおうちょうのホテルいくからいっしょいこ?」
 手を引く徐倫に承太郎は何も言うことなく車から出て、後ろのドアを開けた。それは、承太郎も僕を送る気でいるということか?
 これは一緒に行ってもいいのかな。もしかしたら承太郎なら神社について知ってるかもしれないし。まあ、徐倫に渡そうとしてる椿を探そうとしている手前、教えてもらうのは本末転倒な気もするけど。
「かきょーいん、いこ?」
 その場から動こうとしない僕を徐倫が見上げ、無言で承太郎が見つめる。そんな状況で断そうともなんだかできなくて、僕はゆっくりと車へ歩みを進めた。
「警戒心がないな、拐われないよう気を付けた方がいいぞ」
 徐倫に促されるまま車の後方にある席に乗り込むと承太郎がそんなことを言い出した。思わずぎょっとしている間にも車が発進してしまう。警戒心がない? 拐われる? それはどういうことだ?しかしそんな発言なんてなかったかのように親子は会話を始める。
「かきょーいんね、もりおうちょうにあるおっきなじんじゃにいくんだって」
「大きな神社、とは…八幡宮か?」
 ちらり、と前方にある鏡越しにこちらを窺ってきた緑の瞳に固まる。出会った当初に比べると鋭さはなくなったけど、主張の強い輝きは未だ慣れなくて少しばかり緊張を覚える。
「その、杜王町にある一番大きな神社、としか知らなくて……」
「なら、八幡宮だな。徐倫、花瓶なら神社の最寄りの雑貨屋で購入しよう」
「はあい!」
 元気よく返事した徐倫の声と同時に、車が加速する。本当に一緒に来てくれるのか? それは助かるけど、迷惑になるんじゃあないかな。
「あの、ホテルまで行く通り道までで良いんですが」
「名前も知らない神社だったろう。場所もよく知らないんじゃあないか」
「それは、」
 その通りなんだけど。図星で黙ってしまうと承太郎に笑われてしまった。行き先わからず行こうとしていたなんて、そりゃあ滑稽なんだろうけどさ。思わず頬を膨らませていると彼が「すまん」と、それでも相変わらず笑いながら言ってきた。本当にすまないと思っているのやら。
 そんな僕と承太郎のやりとりの間にも車は移動を続け、窓から見える景色が少し変わってきた。
「……」
 見たことのない店や車は好奇心と恐怖心を煽り、僕はそれらを眺めては前方に座る親子を窺う。あの二人は慣れてるんだろうけど、まさか僕はこんな場所に一人きりで向かおうとしていたなんて……これは同行してもらって助かったかもしれない。
 しかし、行きは良いとして帰りはどうしよう。僕の行き先が住まいに近いから送ってくれてるのだから、帰路は僕だけになってしまう。
 そんな事実に気付いた僕が小さく唸っていると車は石砂利が敷き詰められた広間に停まった。
「目的地はここで違いないか」
「椿の並木があれば、間違いないはずです」
「境内を見ないとわからないな」
 すると承太郎と徐倫が車から出て行くので僕も倣うように出ると、徐倫が離れた場所に見えた石階段へ駆けていってしまった。
「誰かと待ち合わせか」
「いえ。椿を見に来ようとしていただけなんで、待ち合わせなどは」
「なら、私たちが同行しても問題ないか」
「同行?」
「折角来たのでな、徐倫に神社を見せようと思う」
 そういえば徐倫はここへ来るのは初めてで、じゃぱんにあるものについては殆ど見たことがなかったんだったか。僕が住んでいるところを外では「じゃぱん」と呼んでいるのが印象深くてよく覚えている。よくわからないけれど神社もじゃぱん特有なのかな。
「ダディ! かきょーいん! はやくはやく!」
「今向かう」
 石階段を跳ねるように上って行く徐倫に促されるように僕と承太郎は後を着いていく。階段は長く、その上に見える鳥居も見たことないくらい立派なものだ。
「椿を見に来たり、花が好きなのか?」
「え?」
「よく、徐倫への手土産にも花の蕾をくれるだろう。だから花が好きかと思ったんだが」
「ああ、まあ……母が花を好きでしたから、僕も自然と好きになった節はあります」
 言われて考えてみると好きなのかもしれない。花について母親は将来役立つ役立たないに関わらず教えてくれ、夏場には花を愛でる楽しみについて実際に花を摘んでは語ってくれたものだった。
「今回も、その母親から話を聞いて神社に行こうとしていたのか」
「ええ。まあ、詳しい話を聞いてなかったので、場所まではよくわからなかったんですけどね」
「ダディ! おはなたくさんおっこちてる!」
 石階段のてっぺんから先に登っていた徐倫が姿を現す。
「摘んではいないよな、ここの花は神社のものだぞ」
「つまないもん! でも、おちてるのはとっていーよね?」
「落ちているのは、それなら構わないだろう」
「あの、徐倫。その落ちていたお花は赤いかい?」
「うん。でもピンクとかしろのもあるよ」
 散っているのではなく落ちている花、そしてその花は赤にピンク、白とくればそれが椿である可能性が高い。
 ここが母が言っていた神社のようだ。その可能性につい足早に階段を駆け上がる。その花が椿だとして、落ちているくらいだから満開である可能性も高い。
 本当はこっそり準備して渡したかったけど、ここでいいものがあればそれでもいいか。そう思うとわくわく楽しくなってきて、駆ける足がどんどん早くなる。なんで人間は二足歩行なんだろう、四つ足の方がずっと速く走れるのに。
「っ!」
 なかなか加速しないことにもどかしく思っていると、足がもつれて上体がぐらついて石階段へと傾く。このままだと石階段にぶつかる。反射的に手をつこうとし、次にくる衝撃に目を瞑った……が、それは訪れずに手が空振るよう宙を掻いた。
「?」
 どうしたんだ。恐る恐る目を開けるとすぐ近くに石階段があった。
「気を付けろ」
 疑問に思っていると声が降ってきて、腰を強く引かれた。そして未だ体制が直せていない僕は今度は後ろへと倒れてしまい、柔らかくも硬い何かが体を受け止めてくれた。
「あれ?」
「やれやれ、徐倫並みに危なっかしいな」
 見上げるとすぐ上から承太郎が覗き込んできた。なんで承太郎がこんな近くから?
「聞いてるか?」
「ええ、はい……?」
「なら、立てるか?」
「……、…? ……ああ、はい大丈夫です!」
 自分のおかれている状況を認識すれば僕は承太郎に背中から抱き込まれる体制で、慌ててそこから飛び退いた。もしかしなくても倒れそうになったところを助けてくれたのか、こいつは恥ずかしい。
「……、」
 距離を置いた承太郎の方へ顔を上げると、いつの間にか彼の隣に見知らぬ人間が立っていた。僕らの前後に歩いている人物はいなかった筈だが、どこから来たのか。しかもすぐ近くにいる承太郎は気にしないとばかりにこちらを見つめるばかりで、あまりの気味の悪さに言葉が出せないでいると承太郎の手が伸びてきてがしがしと髪の毛を掻き乱された。
乱された髪を整えて再度顔を上げると、先ほどの気味の悪い人間は姿を消していた。視線を外していたのなんて一瞬だぞ、現れた時といい一体誰なんだ。
「早く行こう、なかなか上に来ないと徐倫がうるさくなる」
「……はい」
 相変わらず承太郎は何も気に留める様子がないから僕の気のせいなのかな。そんな後味悪さにも似たものを覚えていると、承太郎の手が目の前に差し出された。
 ……僕も人間としては大きいようだが、そんな僕よりずっと大きな手は流石通称ヒトデ喰いと呼ばれた人間というものか。出された手を受け取るとそれは僕の手をすっぽりと包んでしまった。
「手、大きいですね」
「よく言われる」
 大きさに見合った力強さで手を引かれ、僕と承太郎は上まで登る。そして鳥居を潜れば大きな社が出迎えてくれた。それは住まいにしている稲荷神社の社よりずっと大きい。こんなところがあったのか。
「やっときた! みてみて、おはなきれーでしょ!」
 社の裏から徐倫が両手に何かを抱えて出てくる。手中には赤と白のまばら模様が見えて、目を凝らすとそれは僕が目当てとしていた椿だった。
「どうやらここが目的地だったようだな」
「はい、ありがとうございます」
「こちらも徐倫に良い体験をさせることができた、こちらが礼を言いたいくらいだ」
 言いながら徐倫を見つめる承太郎は目を細めて、柔和に口許を緩めた。ああ、やっぱり、
「やっぱり好きだな」
「何の話だ」
「…え……その、口に出してましたか」
「ああ。やっぱり好き、だと。椿が好きなのか?」
「ええ、まあ……」
 まさか口にしていたなんてとんだ失態だ。しかし承太郎が都合良く僕の言葉を解釈してくれたようで、小さく息を吐いた。子供を見つめる優しい眼差しが好きだなんて、おかしく思われるだろうから助かった。
「あーっ!」
 突然徐倫が叫ぶとこちらに走ってきて、何故か僕の手に飛び付いてきた。驚く僕を尻目に、何故か徐倫は唇を尖らせながら承太郎を見上げる。
「ダディとかきょーいんなかよししてずるい!」
「なかよし?」
「てつないでなかよししてるじゃん!」
 そういえば僕は承太郎に手を引かれていたんだった。親の承太郎が僕と手を繋いでいるのは子供である徐倫としては面白くないのか、慌てて手を解くが彼女は僕から離れようとしない。
「じょりーんもなかよしする! じょりーんもかきょーいんすきなのにダディばっかずるい!」
「……僕?」
「だってじょりーんかきょーいんすきだもん!」
「ええ?」
 まさかの僕? 思わぬことに戸惑う半面気恥ずかしくなりつつ徐倫の手を握ると拗ねた様子の彼女の顔が笑顔に変わった。そんな様子に恥ずかしさは募るが嬉しくなってしまう。
 するとそれを見ていた承太郎が何故か再度僕の手を握った。
「承太郎?」
「なかよしなら、俺も仲良くしてもいいだろう」
「は、はあ」
「なかよしするのだめっていってないもん。ダディばっかかきょーいんとなかよしするのずるいってゆうだけだもん」
 なんだろうこの状況は。どうやら二人は僕となかよし、という手繋ぎをしたいようなんだけど、どうして僕なのやら。
「あの……お気持ちは嬉しいんですが、これだと僕は両手を使えないんですけど」
「……」
「……ダディ、じょりーんのてつないでいいよ?」
「ん」
 徐倫が空いている手を振れば少しの間の後、承太郎が僕の手を解いて徐倫の手を繋いだ。なんだろう、このやりとりは。人間とは家族以外と仲良くしたいのだろうか? この親子を通して人間について大部詳しくなった気がしたけど、まだまだわからないことが多い。
 それでも仲良くしたい気持ちはやっぱり嬉しくて、僕は二人を引き連れる形で社の裏へ向かう。
「……わあ、すごいな」
 裏へ行くとそこには人間の僕の背丈よりもずっと高い椿の木々が並んでいた。それだけでもすごいのに木々は揃って満開を向かえ、その下の地に疎らに落ちた花も合わせて思わず感嘆の溜め息が洩れてしまった。これは数日もすれば母が言っていた通りの花の絨毯ができそうだな。
「なかなかの光景だな」
「ええ、想像以上です」
 近くに落ちていたまばら模様の椿をひとつ拾う。強風に吹かれて落ちたのか、未だ綺麗に咲く椿を徐倫の髪へと挿してやる。人間の女の子は花飾りを好むらしいからやってみたけど、とてもよく似合っていて自画自賛したくなるくらいだ。そして花飾りを好むのは徐倫も例外ではなかったのか、歓声をあげながら喜んでくれた。
「本当は今度の手土産を椿にしたくてここに来たかったんだけど、ちょっと早くなってしまったね」
「そうなの? はじめてみたけど、すっごくかわいいおはなね!」
「だろう? 徐倫にもよく似合ってるよ」
「そう?おしえてくれてありがとーかきょーいん!」
 頬を赤らめて笑う姿に流石に僕も照れてしまってつい視線を右往左往させてしまう。慣れたいけど、好意的な姿勢を向けられると恥ずかしい。
 ふと、定まらなかった視線の先に白椿があって、自然と手がそちらへ伸びる。少し花弁が草臥れているが、それでも真っ白で汚れないそれは控えめにも輝いているようだった。摘まんでみれば草臥れた花弁がひらりと揺れて、その動きに誰かを思い出した。
「承太郎、これ」
 その誰かはいつも潮風に白くて長い衣をはためかせて僕を出迎える彼しかいなくて、こちらへ顔を向けた承太郎の帽子に白椿を挿してみる。帽子と同じ白は同化してしまい見えにくいけど、それでもその白椿は彼らしいと思えてしまう。
「承太郎にそっくり」
「徐倫はともかく、私のような大男に花のようだはないだろう」
「徐倫は可愛くて似合うんです。承太郎は可愛くはないけど綺麗だから椿に似てる、だから大男だろうと関係ないんです」
 承太郎が恐ろしく見えたのは体が大きいばかりではないと最近になって気付いた。それは彼から滲み出る高貴な雰囲気が気迫のように見えていたからで、それは恐いものではないと知ってしまうと一気に恐ろしさは削げてしまったのだ。
「やれやれ……とんだすけこましだな」
「すけ?」
「それを言うなら花京院、お前は赤い椿にそっくりだろう」
 言いながら承太郎は椿を拾うとそれを学生服の胸ポケットに挿した。真っ赤な椿は緑色の学生服に映えて、より色鮮やかに見える。
 これが僕だって? 確かに僕の毛色は限りなく赤に近いけど、この椿のような可憐さはない。
「まさか」
「俺と白い椿がそっくりよりはわかりやすいと思うんだが」
「そうですかね」
 どこをどう見るとそう見えるのやら。もしかして承太郎は人間のくせに人を見る目がないのか。人は人でもヒトデばかり見てるからなあ、僕も花みたいに見えるのかも。
「ねえねえじょりーんは? じょりーんはどんなおはなにそっくり?」
「ええと、徐倫はもっときらきら可愛い花みたいだからチューリップやダリアかな?」
「チューリップ!? じょりーんかわいい?」
「やれやれ」
 はしゃぐ徐倫にどこか呆れる承太郎に不思議に思いながら、僕はまた徐倫の髪に椿を挿してやった。


 一通り椿を堪能し、そろそろ日が沈みそうな空に気付いた僕たちは長い階段を降りていた。徐倫は髪の毛を飾った椿を気に入ってくれたらしく、時折椿に触れながらにっこりと笑った。そんな彼女を見ながら承太郎も笑うので僕も口の端がむずむずしてくる。
 そんなに喜んでくれるとは、やっぱりどうしても気恥ずかしさが先立ってくる。喜んでほしくてやったことではあるけど……うん、嬉しい分、恥ずかしさ倍増なんだ。
 そんな僕など気に留めず、ご機嫌な徐倫は階段の上で器用にターンする。
「あまりはしゃぐな、危ないぞ」
「ちょっとだもん、だーいじょぶ!」
 いや、大丈夫と思っていても承太郎の言う通りに危ない。ここを登った時に急いだあまりに転びかけた僕がいるんだから油断ならない。いくら僕に比べて徐倫が小さいからといってもバランス悪い場所であることは変わりない。
 そんな心配をよそに徐倫はとんとんと軽快に降りて行く。楽しそうだけど、どうか足を踏み外したりなんてしないでくれよ。
「あ、」
 なんて思っていたところ、徐倫の体が不自然に前へ飛び出す。まさか勢い余って? どんな経緯からかわからないけど、あのままいけば最悪徐倫が顔から落ちそうに見えて僕は目一杯手を伸ばして彼女を助けようと動いた。



   ◆◆◆

 昼間、境内に繋がる階段を駆けていって転びそうになった花京院を思い出し、そしてはしゃぐ徐倫にそんな彼の姿を重ねて注意を促した。だが、すっかり舞い上がってしまっている徐倫にはそれも十分に聞き入れることができず、そして案の定バランスを崩したところで俺はスタープラチナを呼んだ。
「スタープラチナ! ザ・ワールド!」
 実に本日二度目の時止めである。ちなみに一度目は徐倫と姿を重ねた日中の花京院の時である。二人ともまだまだ子供といったところなのか注意力散漫である。
「一度きつく叱るべき…、…ん?」
 時を止めている間に宙に投げ出されている徐倫を抱き留めようとすると彼女の手に何か巻き付いているのが見えた。
 巻き付く紐状のものはまるで緑の蛍光塗料を塗ったようにきらきらと輝いているが、これは一体? その紐の先を見るとそこには徐倫へ手を伸ばす花京院と、その背後に見たことない人型の何かが立っていた。それだけでも驚きだったが、紐の先が謎の人型と繋がっていた。
 あれは、まさか…? 確めたいがそろそろ時間だ。俺は徐倫を抱き込むと、スタープラチナを出現させたまま時が動き出すのを待った。
 ざわ、と風にざわつく葉の音が再開し、上段にいた花京院も転びそうになりながらその場に座り込んだ。そんな彼の背後にいる人型は徐倫の手に巻き付いたまま、動こうとはしない。
「え?」
 花京院が戸惑いを隠せない声をあげて、俺の方へ……否、俺の後方にいるスタープラチナを見つめた。そんな様子に先ほど感じた可能性が確信に変わる。
「花京院……お前スタンド使いだったのか」
「す、スタンド?」
「後ろにいる緑のやつ、お前のスタンドじゃあないのか」
「後ろ?」
 花京院は俺に言われた通りに振り向いて緑のスタンドを見ると途端に飛び上がるように距離を置いた。そんな様子に違和感を覚える。
 俺から距離を取るならまだしも自身のスタンドから距離を取るというのはなんだ?
「花京院?」
「あの、あの、緑のはなんですか……承太郎の知ってる人では?」
「……あいつを知らないのか?」
「? ええ、初めて会いますけど、」
 これはどういうことだ。花京院にはスタープラチナが見えてるから、てっきりあの緑のは花京院のスタンドかと思ったのだが、もしかして別のスタンド使いがいるのか?
 しかしそれは違うように思え、では何故花京院はあのスタンドを知らないのかと考えを巡らせる。
「ダディ? もしかしてじょりーんのて、スタンドがつかんでるの?」
「ああ、痛くはないか?」
「ううん。ちょっとへんなかんじだけどいたくないよ」
 ならばあくまでも緑のスタンドは転び落ちそうになっていた徐倫を助けるだけだったようだが……
「……花京院、あの緑のスタンドに徐倫の手を解放するよう念じてくれないか」
「念じるだけでいいんですか」
「ああ」
 すると花京院が緑のスタンドへ視線を向けた瞬間にはもう徐倫の手は解放され、スタンドはそのまま花京院の方へ寄り添った。
「あああ、あの、なんですか……」
「やはり、こいつは花京院のスタンドのようだな」
 花京院は初対面だと言っていた通りに戸惑っているが、緑のスタンドの様子から花京院のスタンドであるのは確実だ。そして自分とスタープラチナの出会いを思い出して、そういえばスタンド発生も何かきっかけがあって後天的に発生する場合もあるのだと思い出した。
 すなわち、花京院のスタンドがたった今誕生したのならば初対面であってもなんら不思議なことはないのだ。
「あの、スタンドとは?」
「説明すれば長くなるが……敵ではない、安心しろ」
「はあ」
 敵ではない、ということに安心したようだが、それでも不安を払拭できない表情でスタンドを見上げるのでとりあえずは車に乗ってから説明しようか。


「帰りまで送ってもらっていいんですか?」
「スタンドについて説明するついでだ」
「その、何から何まですみません」
 しゅんとする花京院に心なしか緑のスタンドは気にかけるように窺っている気がするのは、きっと気のせいではない。何かと気遣いする彼の分身ならば、半身を心配するくらいするだろう。
 スタンド発生理由は結局俺もよくわからなかったので、それは省きつつどうにかこうにか理解できるよう内容を噛み砕いて順に説明してみた。すると理解力は高いらしい花京院は時折難色を示しつつも、一通り話終える頃にはスタンドと触れ合えるほどになっていた。それはスタンドもスタンドで、花京院がまだ慣れてないのを感じ取ってる故なのか……表情の乏しいためによくわからないが、穏やかそうなスタンドで幸いだ。
だが、花京院のスタンドだからな…いざとなればどうなるか? まあ、それはこれからわかることだろう。
「あの、ここで降ろしてもらっていいですか?」
「ここか?」
 説明を終えて暫く静かに車を走らせていると、不意に花京院が後部座席から顔を出してきた。言われるがままに路肩に停車したが、日が沈んだせいでただでさえ暗くなったというのに、そこは街灯もない山の入口だった。
「大丈夫なのか」
「ここを少し登った先に住まいがあるんで大丈夫です」
 山の中に住んでいるとは集落にでも住んでいるのか? 仗助の同級生にも集落住まいの者はいるらしいし、そう珍しくもないのかもしれないがこの暗い中を歩いて帰るのが俄に信じられなかった。
「それに、今日からは彼がいますから」
 言いながら花京院はスタンドの手を握って微笑んだ。この暗がりを歩くことを危うく感じているのを察してしまった故の発言だろうか、やれやれ。
「かきょーいんばいばーい!」
「またね徐倫」
「まっくらだけどみえる?」
「ああ。今日はキラキラ光るもう一人の僕もいるから結構明るいよ」
「かきょーいんもダディもスタンドみえてずるいなーっ、じょりーんもきらきらみたいのに!」
「はは、きっといつか見られるさ」
 暗がりの中に立つ花京院に緑色に輝くスタンドが寄り添う。その輝きは花京院を淡く照らし、日の下では鳶色に輝く瞳を緑へと変色させた。
「今日はありがとうございました」
 言いながら笑う顔も淡く照されているせいかやけに白く、スタンドがいるというのに不安に似た何かを彷彿とさせた。
 これはなんだろう。疑問に視線を落とせばかさりと微かに草が擦れる音が聞こえて、少し視線を戻せばそこにはもう花京院の姿はなかった。
「……ダディ、かきょーいんもかえったからじょりーんたちもかえろ?」
「ああ」
 車に乗り込み、再発進した車内は静かだ。いつもそれなりにお喋りな徐倫を横目で窺えば、彼女は座席の背もたれに寄り掛かりながら寝息をたてていた。花京院と別れて寂しいのかと思えば寝ているだけとは。ほっとしつつ時計を確認すれば普段彼女が夕飯を済ませているような時間帯だった。
「やれやれ」
 まだ夕飯前かと思って行動していたが結構な時間だったとは、俺も無意識の内に浮かれていたようだ。
「花京院か」
 彼はつくづく不思議な青年だ。会う度に彼について分かってゆくのに、核心は未だ掴めないでいる。神経質そうでいて年相応のあどけなさもあって、かと思えば何か違うようにも思えて。
 端的に言ってしまえば彼はアンバランスなのだ。大人も怖じけそうな見目整った容姿を持つのに、中身は子供のように思える場面がある。
「……いや、」
 あれは子供のよう、ではなく浮世離れしているという方が妥当な気がする。花京院は常識に欠けるとまでいかなくとも、常人とは勝手が違う何かがあった。何かは俺もよくわからず、それでもそれがなかなか核心を掴めない要因であるような気がした。
 ふとギアに添えていた手の甲に何か触れたので見てみれば、それは徐倫の髪から落ちた椿だった。
 細くも男らしく筋張った指が椿を摘み、徐倫の髪を飾る様を思い出す。あの時も変わったことを言っていたな、俺を花に似ているだとか……まずこんな大男に対して言うものではない。
 だが、そんな花京院の言葉に対して俺も彼を同じように称したことを思い出した。そんな矛盾を感じては、数年前にやめた煙草を無性に吸いたくなって俺は小さく舌打ちをした。

次の話
2023.12.11 06:42


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