春は来て。
私は学校を卒業して。
夏が来て。
まだ、雲雀は戻ってこない。もう、二度と戻ってこない。
泣く気にも、笑う気にもなれない。ただ、なんとなく空を見ているだけの高校一年一学期が過ぎた。
夕日を見てぼんやりとしていた雲雀の気持ちが、今となってすごくわかる。
寂しい、だけど、誰かに伝えられる想いではない。分かり合いたくない。閉じ込めたい想いだけど、それでも気付いて欲しい。
雲雀がいなくなったけど、治安が悪いというわけではない。雲雀の部下だった草壁が上手く不良どもをまとめているらしい。まぁ、それも後一年くらいしたら限界なのかな。草壁は人望も厚いし、それなりに強いけど、普通の人だから。
そして、私は二学期が始まる前に学校を辞めた。
なぜかって、そりゃあ、いますから。どこに何がって、お腹の中に以下略。
なんだか家が面倒くさいことになったから飛び出した。どこに向かえばいいかなんて考えていたら、誰もいない雲雀の家についてしまった。
鍵は開いていた。とすれば、退かされない間はここに潜伏するべきと考える。

こんなことになって、普通に生きるというレールから外れて。どう見ても散々な方向に向かっている。
いろいろ捨てるものが多くて、身の回りが無駄にこざっぱりしてしまった。でも、これくらいが身軽である。雲雀の「群れたくない」気持ちがわかってきた。
だけど、一つだけこだわってしまうことがある。
私、ちょっとだけ篠塚さんに勝った?

誰もいない、他人だけど他人とは言い切れない雲雀の家。静かな中、時々襲い掛かってくる気分の悪さと戦いながら、私は喋らないお腹の中の人と会話をする。
さて、私は、キミをどう育てましょう、と。
答えは『ごめんなさい』の中。

私も雲雀の狂気に蝕まれた一人だ。だけど、生きている。
いっそのこと連れて行ってくれればよかったのに、なんて思うときもあるけど、それでも生きてる。
かくも悲しきかな。人間様は強くて弱い。私は死ぬ勇気がなくて、生きる勇気はあった。
私は戻れそうもないよ。

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