沙耶が残した荷物を片付ける。使えるものだろうが廃棄するのが僕の主義だ。極力、地球には優しくしたくない。
だけど、一つだけとっておいたものがある…写真だ。もちろん壊れた写真立ては遠慮なく捨てたけど。
あのライターを付けてみる。カチ、と押せば簡単に小さな炎が揺らめいた。
あらかじめ用意した平皿の上で、写真の端に火を点す。焦げ臭い。
何でもない家族写真一枚は、あっという間に燃え尽きて黒くくすぶった。

「…火葬。」

宛もなく独り言。
これで全てが終わった。頭の中の時計がカチカチと音を立てて巻き戻る…沙耶と出会う前まで。
明日から、僕は僕に戻る。一に戻る。否、きっと昨日も一だった、多分その前も。

「僕はいつ死ぬんだろうね…」

最後に一回だけその名を思い出す。
明日にはもう、劣化、崩壊、そして消失という記憶の彼方に行ってしまう君の名前。

「沙耶。」

だから、僕は壊し続ける。
いつか、僕が死ぬ日まで。


END.

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