とうらぶ 宗三 | ナノ



▼ (21)飴と鞭-2

 次郎さん特製の卵粥と梅酒で体がぽかぽかしていた。明日からきちんとやろう、何をすべきか、資料を並べて段取りを立てる。失敗は行動でカバーしなければならない。どんな顔をして謝るかも決めなくては。

 二つの足音が近づいてきた。障子に映るシルエットは打刀の二人だ。

「さにわ、起きてる? 入っていい?」

 加州君が気遣った声をかけてきた。「どーぞ」と返すと、「おじゃま」と軽く茶化すように障子が開く。加州は笑っているけれど、安定君はむっつりと不機嫌そうだった。

「ブス」

 開口一番、それ。隣の加州君がぎょっと目を見開いて「おい」と窘める。安定君はまったく気にせず、唇を尖らせて入り口付近に胡坐をかいた。

「僕のこと責めてるだろ。言いたいことがあるなら言いなよ」

「違う。……私の責任だよ」

「その失敗は大したことじゃない。僕を責めていないなら、とっとといつも通りになってよ」

 泣きそうな青い目が睨み付けてきた。

「沖田君はね、病気で、どんどんやせ細って、死んでしまったんだ。もしもそんな君を見取るくらいなら、病気に殺される前に、僕が君の首を落としてやる。だから太れブス。僕を安心させるのもさにわの仕事だろ」

 加州君は、安定君の不器用な物言いに、やれやれと肩をすくめた。だけど、私を見るときは、まっすぐ力強い目をした。

「俺らとさにわって、一心同体だろ。さにわが自分を諦めて投げやりになったら、俺らも捨てられたのと同然じゃん。そんなの、絶対許さないから」

「……みんなに心配かけてばっかりだなぁ」

 まったく、どうして私はこうもダメなのか。あんまり落ち込んだ顔を見せてはいえないと笑ってみたが、もっと心配そうで、バツの悪い顔をされてしまう。

「本来なら士道不覚悟で切腹させているところだけどね。今回は人情で見逃してあげるよ」

 ぽそ、と安定君はつぶやいて、席を立った。

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