▼ (22)再刃
歌仙がつれてきた人は、警戒するように節目がちにこちらを伺ってきた。ふとすれば枯れ木のように見えてしまう長身痩躯、しなだれた頭。袖で口元を覆い、心の内を隠している。私は彼をよくよく知っている。
「……宗三左文字と言います」
聞いたことのある言葉。少し前のことなのに、ものすごく遠く思える。嬉しくなって、それから、悲しくなった。おかえり、とも、久しぶり、とも、言いがたく。言葉に詰まってしまう。
再刃するとはこういうことなのか。全てが振り出しに戻る。それでも手元に置いて欲しいと彼は言ってくれた。
私の無言に怪訝な顔を向ける宗三。歌仙は気まずそうに片眉を寄せてそっぽをむいている。
言わないと。何かを。彼は新人なのだから。
「よろしくね、宗さん」
ぽろりと出てきた呼び名は、呼び慣れたもの。自分でもおかしくなるくらいにうかつだった。いきなりニックネームをつけられて気持ちが悪いのか、宗三は眉をぐっと寄せて私を睨んでくる。
「宗さん? ……宗"ザ"ですが」
「あぁ……そう。かけて縮めた」
そこには繰り返ししかなかった。再現のように同じやり取りを繰り返す。すべてが胸の痛むほど退屈だった。それなのに、なぜ、こんなに、懐かしいのだろう。
「……不躾な質問ですが、以前、どこかでお会いしましたか?」
不可解そうな双眸に、過去の記憶を手繰るような思考が芽生えているのだろうか。否、全ては鉄をも溶かす炎の中に消えてしまったことだろう。きっと私の反応が不自然なだけで。
私はハイともイイエとも言えなくて、泣きそうになりながら彼へ笑いかけた。
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