とうらぶ 宗三 | ナノ



▼ (18)選りすぐりの六人

 新たな場所に出動要請が来た。歴史改変者の大まかな出撃地点は報告されているものの、情報は極めて少ない。まずは現場の敵の力を測らねばなるまい。なるべく慎重に進軍したいところである。原則的に六人一組、ここは本丸内でも選りすぐりの一軍メンバーを選ぶ必要があるだろう。

 選りすぐり。

 ……悩ましい。

 五人までは、比較的簡単に決まった。 

 まず、加州君。安定君。次郎さん。獅子王。彼等は古株で練度が高く、当番の隊長業もこなし終えている。横繋がりもきちんとできているため連携が期待できる。

 次に、三日月さん。比較的新参にあたるが、そもそもの実力がズバ抜けている。練度が低くとも即戦力だ。信頼も厚い。でしゃばりすぎず、必要となれば先導もフォローもできる。ジョーカーが手札にあるような、ありがたい反則。

 じゃあ、最後の一人は?

 小夜君。先日リタイアを述べたばかり。心の傷は深く、今はそっとしておきたい。

 宗三。古参で、練度は高く、そこそこ協調性もあり、隊長の任務も全うした。ただ、戦闘面では力不足が否めない。

 江雪さん。実力があるけれど、性格に癖がある。兄弟以外とはまだ打ち解けている感じがしない。ベストコンディションで臨みたいならば、その点は考慮したいところだ。

 歌仙。伸び代はあるけれど、最前線というにはまだ練度が厳しいだろう。

「さにわ……難しい顔してる」

 小夜君が心配そうに眉を八の字に下げて私を見上げてくる。

 心細いのだろう。暇さえあれば後をちょろちょろついてきて、とても静かにこちらの様子を伺ってくる。心底から可愛い。仕事も真面目にやっているから、まとわりつくのは実に良し。

「難しいからね……新しい場所だから、いつもと編成を変えなくちゃいけないし」

「なるほど……意見は聞きたいけれど、聞いたことで隊長に責任を負わせたくない……か?」

 鋭い三白眼は私の心を精神会話抜きで見抜いてきた。やっぱりこの子は優秀な頭をしている。正解だよ、と、言葉ではなく、頭を撫でて答える。あれからすっかり無防備で、小夜君は少しだけ目をとろんとさせた。

「僕は、宗三兄さんを推薦するよ」

「理由を教えて」

「長く居るし、一応、空気も読む。それに、戦いたがっている。僕が前線を引いてから、宗三兄さんの練習量が増えたんだ。僕みたいになるのが怖いんだと思う。僕も、とても怖かったから、わかる」

 淡々とした声なのに饒舌だ。相変わらず懐いたという風には見えないけれど、宗三のことを特に気にしていることがわかる。しかし、その話題に突っ込んでもしょうがないだろう。

「今は怖くない?」

「怖いよ。とても……とても。売り払われてしまわないか、とか、さにわが僕の目の前からいなくなってしまわないか、とか。そんなことばかり考える」

「売らないし、いなくならないよ」

 何を馬鹿なことを、と、私は憤慨のフくらい怒って、言葉端に織り込んでみる。だけど小夜君は答えない。岩のように動かず一点をじっと見つめる様子は、江雪さんの面影がある。だけど、視線からは敵意や警戒がまるで諦めのようにすっかり抜けきっていた。

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