安心院なじみの驚愕
「球磨川先輩と同盟を組んでから、楽しくはなったけど負け率が上がった気がするな……」

私はブツブツ言いながら裏庭にいた。球磨川先輩と最初に会った場所であり、まあ基本的に人が来ないから独り言スポットとして活用している。

「めだかちゃんも忙しそうでセクハラするのも心苦しいしなー……いつも元気っていったってねえ。かと言ってセクハラ以外は無力な私があんな武闘派生徒会に深く関わるのは御免だしなあ」

「それは君が戦闘力を持たないからだろう?」

すげー可愛い女の子の声っ! 声が可愛いってのもあるけど、声だけで間違いなく可愛い女の子だとわかる声だ。

白髪で巫女服のべらぼうな美人。巫女服! 巫女服……! なんか球磨川先輩がたまにどこかから出している螺子に似たものが刺さっているけど、ロボ属性なのか? いや、なめらかな肌は血が通っている。ピアス?

めだかちゃんや喜界島さんみたいに凶器的なボディをしているわけではないが、華奢な感じとほどよい肉付きが女の子らしくて抱き締めたくなるタイプだ。

その割に、アルカイックな微笑が何を考えているかわからない。ミステリアスな雰囲気……イイ。

「どちら様ですか? そして今日のパンツは何色ですか?」

「実はノーパン」

「マジっすか!?」

「なんてね☆うっそー」

「やだな、うっかり鼻血が出かけちゃったじゃないですか……夢をありがとうございます」

その巫女さんはセクハラに対して顔を赤くするでもなく、不快そうにするでもなく、意味がわかってないわけでもなかった。冗談として受け取ってもらえる――これほど心地のいいことはない。

「僕は安心院なじみ。親しみを込めて安心院(あんしんいん)さんと呼んでくれ」

ふむ……僕っこか……。ときめきポイントが高いな……。

「親しみも敬いも得られるいい呼び名ですね。仮定としてこれがルビの振られない文章だった場合、どちらで呼んでも読んでる側には構わないわけですが」

「セクハラがアイデンティティの君がそんなこと言っちゃダメじゃないか」

「私のことをご存知で? と言っても、出会い頭にぶちかましましたものね。謝りませんけど!」

「君のその姿勢に敬服するよ! そんな君に僕からスペシャルサービスをしてあげよう」

「おっぱい揉ませてくれるんですか?」

「今度ね」

安心院さんはそもそも胸の前でバッテンにしていたわけだが、ちょっと体を捻って隠すような動作をした。恥ずかしがるフリもおまけについてきた。

や……やべええええええええ! あ、安心院さんっ! 安心院さんっッ! あなたは! 天使かっ!

性に対して少し無知っぽい感じのめだかちゃんもいいけれど、安心院さんの不二子ちゃん系悪女の香りがする大人っぽさがたまらないっ……! なんて可愛いんだ……巫女服よくお似合いですね……。

「僕のサービスはこれだよっ!」

ぎゅっとしてちゅー。

首の後ろに手が回り、引き寄せられる。お花みたいに甘い匂いがする……!

安心院さんの柔らかい唇が、私の唇に重なった。

えっ? なにこれっ? 初対面の美少女にチューされた! やだ! なにこれ! すげえ! すげえ! 生きててよかった……!!

きゅっぽん!

「リップサービスだよ。これで君も能力者として物語に参戦だ☆」

「……へっ? あ、ああ……あの。もらったものお返ししますんで、もう一回お願いできますか?」

「お前頭おかしいんじゃねーの」

「ありがとうございます。我々の業界ではご褒美です」


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