てにす ルル | ナノ



▼ 間章/好き好き大好き愛してる

 その人は宍戸さんの友達だった。

 雀さん。

 俺は宍戸さんを通して雀さんと親しくなった。


***


 雀さんは素敵な女性だった。

 宍戸さんと張り合うくらいに気が強くて覇気があるのに、決して乱暴ではなく、下品でもない。礼節をわきまえているし、距離をはかるのも上手だ。凛として、時に女性らしいおしとやかさを見せる。

 雀さんは完璧な女性だ。

 俺が彼女に想いを寄せるようになるのも、そう時間はいらず、また、仕方のないことだった。


***


 宍戸さんと雀雀さんが付き合いはじめたそうだ。

 一番最初に、俺に連絡してくれた……らしい。

 俺は「おめでとうございます」と、言った。


***


 雀さんは前と変わらず俺に接してくれている。

 宍戸さんは雀さんに接触する男に時々焼きもちをやいていたけれど、俺にはそんなことない。

 俺は、ただの、後輩だ。


***


 神様。

 俺はどうすればいいのでしょう。


***


 俺はただの後輩。


***


 今日も雀さんは優しくて素敵だった。あなたのことが好きだ。


***


 最近ミスが多い。また手首をこねる癖が再発してしまったようだ。頑張って直したのに。


***


 宍戸さんが憎い。


***


 集中できない。レギュラーで居続けることはできるのだろうか。宍戸さんは俺のことを心配して励ましてくれる。やはり宍戸さんは素晴らしい先輩だ。努力をして這い上がった人は、格が違う。


***


 宍戸さんから聞いたのか、雀さんも俺を心配してくれた。ただあなたを抱き締めてキスがしたいだけだと言うことをどうして伝えられるだろうか。俺は彼女に何もいうことができない。


***


 跡部部長に怒られた。レギュラーの代わりなら幾らでもいる。サーブだけの俺がサーブを決められなければ意味がない。

 俺なんか。


***


 宍戸が憎い。

 雀さんを奪った宍戸が憎い。


***


 神様。

 どうか俺に救いを。


***


 努力は悪いことだろうか? 否。努力は正義である。生まれ変われば、また新しく築くことができる。

 宍戸から雀さんを奪う。奪うのではなくて、これが正しい、あるべき場所なのだ。


***


 宍戸さんごめんなさい。


***


 神様。

 罪を許してください。俺を許してください。


***


 雀さん、あいしてる。


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