▼ 静かにオチル
突然ですが雀が行方不明になりました。
もちろん、『なんとなく』想像がついている私は、事ある毎に『彼』を注視してしまいます。だけど、刺激して自分が痛い目にあうのは嫌だし、ましてや的外れな推測で関与を疑われるのは御免です。なんせ何でも見透かすと自負する眼力をお持ちの方がごく近くで見張っていますから。
サテ。
いつもの私は亮君のお手伝いをしている。行方不明の捜索なんて警察に任せておけばいいものを……。いても立ってもいられないのかな。きっと私が行方不明になったら若君も同じことをしてくれるはず。私だって、若君が行方不明になったら……だから手伝う。
跡部君はお金をかけつつ頭を使いつつ、自分でも動くオールラウンダー。闇雲な亮君とは大違いで頼りになる。だからこそ、私が疑われないように頑張っているのだ。直接手は下していないけれど、関わっていないと言ったら否定はしきれない。まぁ、聞かれたら否定するし、仮に明らかになったとしても、罪にはならないけど。
私とは違って皆に愛されている雀を探す人はたくさんいる。うらやましいなぁ。
鳳くんもその一人。
犯人の癖に。
当然、裏はとれている。神憑り的な出歯亀能力を持つジロちゃんが見たって言ってたから。なんで私がそんなにジロちゃんを信頼するかって、それは、同類だからだろう。だからジロちゃんも私に好感を抱いている……んじゃないかと思うんだけど、実際のところはどうなんだろうね。私には何の能力もないからわからないよ。
しらっと雀の心配をする鳳君。
どんなことをしているのか、私はジロちゃんに教えてもらっている。
わりかしウブでつまらないとブーイングをとばしたり、逆にそれが面白いと笑いあったりする日々だ。実に愉快痛快。ただ見ているだけの環境はなかなかいい。ワイドショー垂れ流しにして情報をかき集めるよりか全然。
「俺、思うんだけどさぁ」
ジロちゃんはもったいつけて、私の目をジッと見ます。
「誰が悪いか、よくわからないよね。監禁したのは鳳、そそのかしたのは乃子ちゃん、乃子ちゃんをころしたのは雀ちゃん、じゃあ、雀ちゃんをそうさせたのは?」
「私は知らないよ。神様とやらにもあったことがないから。しいて言うなら私達は善人じゃないってくらい。知りながらお触り禁止しているジロちゃんもね」
「まあね」
ジロちゃんは肩を竦めて笑った。
「ところで、鳳の独り言がなんかヤバくて面白いんだ。神様とか、俺たちは滅びる運命とか。何かもう、完全に頭イッちゃってる感じ」
「私そんな追い詰め方したかなぁ……」
「いや? でもなんか、それじゃなくて、多分鳳は、変なものをみたんじゃないかな」
「例えは?」
「うーん……神様とか?」
「なにそれ、ウケる」
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