▼ ぼーかんぼーがん
「乃子ちゃんは、なんで傍観しないの?」
お弁当を広げて和気あいあい。ジロちゃんが私に絡むから取り残され気味な琴梨ちゃんが、思い詰めたようにポソリと言った。
「ん?」と聞き返す。ジロちゃんは白けている。
「今、芥川君が神様って言ってたけど、私の知ってる神様は違うよぉ。じゃあ、どんなのが神様って聞かれたら、わかんないんだけど……」
「あら、わからないんだ。それで?」
「神様に聞いたらね、乃子ちゃんはぁ、傍観しなくちゃいけないんだって。傍観って、一歩離れたところから黙って見てることだよね? やっといたほうがいいよ。きっと、神様に意地悪されちゃうよぉ……」
「バッカじゃん」
ジロちゃんは口に物を入れたままモゴモゴ言った。
「将棋じゃないんだから役割与えられてもその通りになんかコマ進めるわけねーだろー。それに、乃子ちゃんは常に傍観してるよ」
「してないよ」
「してるしてる。だって、考えてみ? お前、乃子ちゃんと仲良くなれたって思ったことある? ていうか、バカにされてるのわかってる?」
「……」
琴梨ちゃんは私を見る。にっこりと笑い返す。何も言うまい。否定しても別にいいけれど。疑いを持たれた時点で、否定するのは遅すぎる。
「……わかんない」
ナイス判断。うんと頷くよりは、荒波立たない。
「だろ。乃子ちゃん、日吉以外に心開いてないんだよ。一定の線引いて、孤立しない程度に立場作って、あとは距離取ってんの。何やるにしても気がないし、楽することばっか考えてるし」
それ言い過ぎじゃない?
「ジロちゃん、それってバッシング?」
「違う違う! 俺的には誉めてる」
「疑わしーっ」
ジロちゃんを突っついたり、ジロちゃんに突っつかれたり。胸を狙ってきたら目を狙い返したり。
再び置いてきぼりの琴梨ちゃん。
「……アーメン」
琴梨ちゃんは、そっと、十字架を切った。
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