てにす ルル | ナノ



▼ 先生?

「宗教が色々ある通り、神にも色々あります。一つの神についての描き方は宗教によって違います。また、順を追って考えてみると、最高神にも位があったりします。乃子さんはポイマンドレースをご存知ですか?」

「ご教授お願いしますの。できるだけ簡単に」

「よろしいでしょう。ポイマンドレースはいわゆる禁書の類いです。偏った見方をしてしまえば、科学で言う粒子を神と考えるビッグバンのような話です。神なのか哲学なのか科学なのか、境界がはっきりしませんね。その昔の哲学は宗教や科学と背中合わせでした。錬金術師が科学者とされていることは有名ですよね」

「ほー」

「その話は少し置いておきましょうか」

「置いといちゃうの?」

「はい。……さて、乃子さんはおまじないに興味を持ったことはありますか?」

「うん。可愛くなれるおまじないとかー恋が実るおまじないとかー」

「それならもうまじなわなくてもいいですね。
 そんなおまじないですが、漢字で書くと『お呪い』――オノロイなんです。物騒ですよね。呪いと言えば日本では藁人形、西洋では黒魔術なんかが主流のイメージがあるでしょう。黒魔術のベースは、一概には言えませんが悪魔信仰です。悪魔信仰――悪魔には生け贄が必要です。対して、神には生け贄など必要ない。ここはどんな宗教も似通っているのですが、神の教えに従い徳を積んだ者には救いがある。何かを捧げるということは神も悪魔も同じですが、徳と生け贄では性質が大きく異なる。徳は積むものだけれど、生け贄はものを減らします。……まぁ、実際の宗教の徳は信者の数と金勘定の問題だと思いますけどね」

「そうだね。マネーマネーだと思うよ」

「俺の物の見方はひねくれていると自覚しています。が、乃子さんに賛同していただけるなら嬉しい限りです。
 最初の話に戻しましょう。乃子さんの話していた方は、神ではなく、悪魔に拾われたのではないでしょうか。神が意味のない物々交換を求めるものなのでしょうか? 俺はどちらかと言えば合理主義なので、意味のない行動をする理由がさっぱり想像できません。しかし、悪魔ならわかる。いや、仕方がないと思える。悪魔、クトゥルフに出てくるような邪神、人間……これらならばやらかしてもしょうがないでしょう」

「悪魔かぁ……人間とならべちゃうところが憎いねっ、このっ」

「乃子さんは最近流行りの言葉で表現するなら小悪魔系でしょうか」

「え? そうかなあ?」

「時々、手のひらで踊らされているような気がしてならないんですけどね」

「そんなことないよう」

「本当ですか? 嘘吐いたら仕返ししますよ」

「やだぁ、私、何されちゃうの?」

「しばらく口ききません」

「えー!? やだ! やだ絶対やだ!!」

「冗談です」

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