てにす ルル | ナノ



▼ あの子の秘密

 琴梨ちゃんの問題は片付いたと言ってもいいだろう。みんなに「仲良くしてあげて。本当はいい子なの」って私が言えばいいし、広いコミューンにぶちこんでしまえばいい。彼女もいろんな人に理不尽に(時々、または、人によっては理不尽か疑問に思うが)嫌われることがなければいいようだ。適当に友達と彼氏を作ってあげて面倒を押し付けてしまえばいい。顔はいいから、楽だ。頭が悪いから私に素直に従ってくれるし。

 問題は雀。みんなに好かれる体質ってなんだろう? いや、言葉通りの意味だと思うけど。

 一応、琴梨ちゃんのおかげでみんなに嫌われる体質っていうのはそこはかとなくわかった。ともかくいるだけで腹が立つような、イライラするような、そんな存在。本人がどうこう以上のところで、それを引き出している……なんだろうか? 電波やフェロモンでも出しているのか? 科学的な根拠は……いや、若君はそういうの嫌いだろうから、やめとこう。

 つまり、雀はその逆ということだろう。


 ……ということを、若君に名前を言わず相談してみることにした。


「ふむ……」


 若君は、どこか楽しみを滲ませた顔で悩み始めた。


「そういうのは初めて聞きました。怪談とも都市伝説とも違う。単にその人自身の問題である可能性や、ただの思い込みということも言えるでしょう」

「……つまんなかったかな」

「いえ、楽しいですよ。そんな顔しないでください」


 不安そうな顔をする私の頭を撫でる若君。きゃっ。擦り寄ってみる。若君、優しい顔してる。


「残念ながら俺たちは神の目線で物事をとらえることができないので、神がいるかすら確証が持てません。神がいるかいないか、という論を転がすならば、神が神を自覚していないことだってありうる。その場合、俺たちと同じ世界にいてもおかしくはないでしょう。まあ、神が人間であっては困りますので、同じ世界にいても人間ではないと思いますが……乃子さんは生き神を信じますか?」

「宗教関係はなるべく関わりたくないタイプ」

「お気持ち、察します。俺も信じない人間なので」

「若君はその人の話をにわかにも信じない?」

「まぁ。
 ですが、怪奇現象と人間の精神状態は深い繋がりがあるようなので、興味深い話ではあります。どんな状況になったら神を拝見できるのか、非常に興味深い。乃子さんもご存知でしょうけど、こっくりさんも集団パニックの一種という見解があります。また、金縛りも嗜眠に関係する。世の中の怪奇現象は科学で解明できる。しかし魂については明確な解釈が出ておらず、神やあの世も実在するかしないかはっきりしていない……つまり、一蹴してしまうには情報が少ないのですよ。そして何事にも二つの可能性を見いだし、両方の立場から事実を探っていくのが俺のオカルト的な物事の見方です」


 若君は清々しいような、どこかカッコつけた顔をした。キメ顔ってやつだろうか。

 いやはや、実に長い話だった。でも若君のトークだからいいの。嬉しい。

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