▼ お昼する
最近、お昼休みになると亮君が教室に顔を出すようになった。雀に会いに来ているのだ。この頃、様子が変だから心配なのだろう。
「よっ。雀。と、乃子」
「オマケの乃子ですよー」
「そうは言ってねーよ」
亮君の困った顔。うぅん……冗談が通じない……。
「雀さん、糸川さん、こんにちは!」
「あら、鳳君」
今日はセットか。
「……ちょっと。恥ずかしいから教室に押し掛けるのやめてくんない?」
真っ赤になってふくれる雀は、睨み付けるにしては可愛すぎる眼差しで亮君をとらえた。
「だって絶対にお前から来ないだろ」
「行かないわよ」
「なら俺が来るしかない。違うか?」
「来なければいいじゃない」
「来たい理由があんだよ」
暑苦しいなぁ。ほっときたい。
鳳君はニコニコして二人を見守っていた。暖かい目だ。
彼は、こう……ナチュラルなのか、悪意があるのか、未だにわからない。「サーブだけ」なんて言われていじられちゃうキャラだったり、世界平和を願ったりしているけど、本当はどうなんだろうか。興味のあるところだ。
「……の病気が、雀さんに移ったんだ」
ポソリと、独り言のように呟く。聞こえないと思って言った独り言だったのかもしれない。
「何が?」
「はい? 俺は何にも言ってませんけど」
鳳君の爽やかな笑顔。笑顔の時点で失敗している。ここは、きょとんとした顔をしないといけない場面だ。
鳳君は、腹に何か持ってる。……それを知ったからと言って、だからどうだと言う話だけど。
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