てにす ルル | ナノ



▼ 少し経ったけど

 琴梨ちゃんってすごく面白い。笑える。マネになってから問題ばっかり起こしてる。確かにマネの中でも群を抜いて可愛い子だからね。見てる分には最高なんだけど。

 他の女子マネとつまんないケンカしちゃったり。

 若君情報だと「ろくに仕事もできない癖にサボる」「人によって態度が違う」「レギュラーのマネージャーでもないくせにレギュラー陣にべったりで邪魔」とかなんとかいうところを刺されちゃったみたい。それはまぁ、然るべきだよね。

 で、レギュラー陣に泣きついたり。

 そういうときは、というか、女性間のトラブルの中間管理職は忍足君がやってたり。お互いをやんわり宥めて話を纏めるのが本当にうまい。さすが、伊達眼鏡の伊達男。彼女が三人いるって噂が立つだけのことはある。テニス部と他のお稽古しながら彼女の三人はなかなか難しいと思うんだけどねぇ。実際に聞いたところ「ややわぁ。四人おるよ」って言われた。すぐ「嘘に決まっとるやん。アホか」って笑ってたけど疑わしいところだ。

 雀はもうずっとカリカリしてて、ちょっと情緒が不安定気味になってる。ピリピリしてるっていうか……すぐ怒って謝ってを繰り返していたら、自己嫌悪に陥っちゃったみたい。なんだか最近、様子が変。明るいのと暗いののギャップが強くなってきて、スパンが短くなってる。なんか亮君関係であるのかなぁなんて思ったけど、やっぱり違うみたいだし、多分、琴梨ちゃんが嫌いなだけなんだと思う。そんな風に人を嫌う自分が嫌いになってきちゃったのかな。カワイソ。


 で、私は得してる。


 若君が泣きついてきたりする。いや、実際には泣いてないんだけど。「もう勘弁して欲しいです」って。

 なんでそれが得かというと、琴梨ちゃんの株が下がると、私の株が上がるのだ。私と雀の株は同じくらいだから比べてどうこうっていうことはなかったのだけど、こうやって比較対象が出てくると「やっぱり俺の彼女はよくできた女性だなぁ」なんて改めて実感できるはず。

 自分で自分のことを「よくできた」なんて言うのは変なことだと思う。だけど、「よくできた」を心がけているから、若君からの「よくできました!」の花丸が欲しい。

 若君は清楚な女の子が好きらしい。多分、大和撫子みたいな感じだと思う。お家は道場だし、本人はテニスやりつつアングラ報道しつつ根は武闘家だし。何よりお母さんの雰囲気とかもそんな感じだったし。

 だから私なりに研究して、今の私にできるかぎりの清楚を目指した。アレンジ加えつつね。昼は清楚、夜は大胆、みたいな?

 頑張ったんだから。花丸欲しいよね。

 だから琴梨ちゃん、ありがとう。

 お手軽に私の株を上げてくれた琴梨ちゃんに感謝する。だから、私はみんなみたいに意地悪しない。

 琴梨ちゃんは私を味方だって思ってるみたいだけど、何の損得勘定もなく人と付き合えるわけないよね。みんな、どこに刃物を隠しているかわからないから。


「本当に……あの人は苦手です……」


 若君は吐き出すように呟いて、うなだれた。なんかあったのかなぁ。虚勢を張りたい子が弱音を言ってくれるのは嬉しいな。

 よしよしと頭を撫でる。嫌がらない。髪の毛サラサラだなぁ。


「乃子さんはすごいですよ、あの人と仲良くできるなんて……」


 利害関係があるからね。都合が悪いから黙っておく。


「俺は心配でしょうがありません。乃子さんのそういうところに付け込むようなやつですよ」

「心配してくれてアリガト。でも、悪口はだーめ」


 愚痴っぽい性格の子にそれはきつい話だと思うけどね。

 人差し指で若君の唇を突っつく。やわらかーい。ふにふに。

 若君は半身引いて、手のひらで衝立を作った。


「遊ばないでくださいよ」


 やっぱり照れて怒ったような顔をする。可愛い。

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