■ サプライズをかけたじゃんけん
「火神火神、悪いんだけどアイス買ってきてくれよ」
という火神にお願いしたら案の定嫌そうな顔を浮かべた。
「なまおが自分で買ってくりゃあいいだろ」
「やだよ外暑い」
「オレだって行きたくねーよ!!だいたいいきなり来たと思ったらなに我が物顔のように居座ってんだ!帰れ!!」
Go home!とこれまた綺麗な発音で怒鳴ってリビングのドアを指す。ちなみに俺はというとお菓子を食べながら優雅にテレビ観賞に勤しむ。バカめ、帰れといわれて帰るやつがいるか。まるで猫のように毛を立てて威嚇する火神を花で笑う。
「イヤだね、火神の部屋超涼しいんだもん。ついでに美味い飯にもありつけるし至れり尽くせり!」
「うちはホテルじゃねーよ!居座るなら金払え!!」
「そんなものはない!」
集るなんて最低!と抗議したら蹴りが飛んできた。本気で入れて来やがった。痛みでその場でのたうち回る自分に火神は冷めた目で見下ろしてくる。
「とにかく、俺は買いにいかねーからな」
「げほっ……えー、ならじゃんけんで負けた方がアイス買い行くとかはどうよ?」
「いまアイス食いたい気分じゃねえ、行きたきゃなまお一人で行けよ」
と、もう相手をする気がないのかそのままバスケ雑誌を読み始めてしまった。
ころころと転がって火神の前に行ってみるが全くこっちを見ようとしない。
「火神ー」
「行かないっていんてんだろ」
「かーがーーみーくーん」
「……」
何度も呼んでみるがつれない態度を取られてしまう。挙げ句シカトまでする始末。ごろごろごろごろ、火神の気を引こうと火神の前を行き来する。だが反応しない。目配せもしない。最早我慢比べといってもいい。
こうなれば、と最後の手段にでることにした。
「大我」
ぴくり、と火神の体が跳ねる。仰向けの体勢で顔を上げると火神と目が合う。それを狙って口角を上げて挑発的に笑ってみせた。
「もしさ、いまからジャンケンして勝ったら」
オレのこと、好きにしていいぜ?
瞬間、火神の目の色が変わった。
「ほんとあいつチョロイなぁ」
家主がいなくなった部屋で大の字になりながら笑い声を漏らす。今頃悪態をつきながらコンビニに向かっているところだろう。
鼻息荒くして勝負に挑んで負けたときの顔を思い出すだけで笑いがこみ上げる。すると、そこらへんに放り投げた携帯が鳴り出した。ずりずり体を這って腕を伸ばして携帯を取る。そして、着信相手を確認して慌てて電話にでた。
「はいみょうじです!すみませんいま手が放せなくって……はい、いまさっき家出ていったところです。黒子がいうにはコンビニ前で青峰が待ち伏せしてるらしいので、夕方までは大丈夫かと。だって相手青峰ですからねー、バスケバカのあいつがバスケ誘わないわけないっスから。リコ先輩たちの買い物終わったらお願いしますね。……全然怪しまれませんでしたよ、あいつ今日自分の誕生日だっていうのすっかり忘れてたんですから!帰ってきたら絶対驚くの間違いないですから、存分に驚かてやりましょ!そんじゃ待ってまーす」
一通りの通話を終えて通話終了ボタンを押す。一度腕を上げて体を伸ばしてから勢いに任せて起きあがる。
「さてと、先輩たちが来るまでに掃除やっとくか」
ついでにエロ本でも探してやろうと意気込んで掃除機を取り出すために物置へと向かった。
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