■ *火神君にバニーガールになってもらいました
「こういうのってオヤジ趣味っていうんだろ」
テレビで流れているNBAの試合に目を向けたまま、大我がぽろっと口にした。
聞き捨てならない単語に即座に反応してすぐに否定する。
「えー、そんなことないよ」
「今時こんな格好させるやつなんておっさんくらいだろ」
「ヒドイや大我、その衣装は大我のために特注で頼んだのにっ」
泣きマネをして気を引こうと試みたが等の大我はこっちを気に素振りを見せずテレビに夢中。仮にも恋人になんたる仕打ちだろう。泣きマネを続けながらも覆った手の隙間からチラリと大我を盗み見る。
黒いレオタードに身を包んだ胸元はバスケで鍛え抜かれた胸筋により谷間が出来上がっている。腕はもちろん露出されながらも、手首にだけカフス付きの袖がついている。剥き出しの太腿は網タイツの網目に沿って肌が食い込んで形作っている。そして、ハイレグ部分から揉めといわんばかりにはみ出た尻が目を誘う。そして極めつけは大我が動く度にふりふりと揺れる頭上の長い黒耳と万丸い白い尾がなんともキュート。セクシーなお尻とキュートな尾のギャップがたまらない。
そう、本日の大我の衣装はバニーガールさんである。
大我に合うサイズがなかったので特注した代物。尻がはみ出てるのは業者のミスだ。決して自分が仕組んだことじゃない。
しかし、当の大我はというとそんな恰好をしていながらも怒るどころか恥じらう素振りも見せずに寝っ転がって試合観賞に勤しんでいる。少し前まで顔を真っ赤にして変態と罵っていたのが嘘のようだ。女装に慣れたのに喜ぶべきか悲しむべきか複雑なところである。
「つまんないなー、少し前は着る度に変態って罵って顔真っ赤にして怒ってたのに」
「なまおに何度も無理やり着せられてんだから嫌でも慣れるっつうの」
「ふーん……慣れ、ね」
バニーガールの格好してリラックスした様子でテレビに釘付けになっている体育会系男子高校生の姿はなんともシュールな光景としかいえない。
ちなみに俺はというとふさふさの尻尾を揺らす大我のお尻に釘付けだ。いますぐそこに顔を埋めてやりたいけど、いまの大我じゃ相手にしてくれないのは目に見えている。このままだと楽しむこともできずにさっさと脱いでしまう。
ならば、と考えた末に出た結論はバスケから意識を外させればいいというのであった。
すくっとその場から立ち上がって大我の後ろに立つ。そして、意識がバスケに向いている隙に寝転ぶ大我の背中に重なるように倒れた。突然上に乗っかったきた自分に大我が驚きの声を上げる。
「あ!? おいなに乗ってきてんだよ!」
「構ってくれない大我が悪い」
「悪いって、お前ガキかっ……っ!?」
ごりっと尻にとっくに元気になってしまった自身を押し付ける。もう固くなっている自身のにいち早く気づいた大我が頬を染めて振り返った。
「な、なにサカってんだよっ!」
「恋人のバニーガール見て興奮しない男なんていないさ」
「は、なまお離れろっ!俺は、いま、っ…試合、みてっ、んっ……」
ズボン越しよ昂りを大我の尻の割目に沿うように腰を揺らして擦り上げる。尻と昂った自身との間に挟まれた尾が丁度いい具合に刺激を与えてくれて気持ちいい。
やめろと制止を求める大我だが、無意識なのかそれとも分かりながらも止められないのか自分の昂りを挟む尻に力が入り始めている。
ぐいぐいと押し付けながら、今度を背中に手を伸ばす。胸と尻だけ隠したデザインの衣装なので均等に整った美しい背筋を拝むことができた。背筋に沿って指でゆっくりと降りていけば大我の口から吐息が零れ落ちる。
「うっ、はぁっ……なまおっ」
「ふふっ、背中も感じちゃうなんて大我エロくなったね」
「そうさせたの、っ、おまえだろっ……ぁっ!」
窪んでいる背骨部分に爪を立てて引っ掻いてやれば大我はたまらず声を上げた。爪先でどんどん下へと移動していき、最後は真っ白な尾に到達する。
「しっぽ震わせちゃって、可愛いなぁ」
「んぅっ、んっ……ッ……!」
指で尾を押すのと同時に昂りも一緒に押し込む。すると、ギリッと奥歯を噛み締めるのが聞こえた。回数を重ねてるというのに未だ声を出すのを躊躇う大我に加虐心を駆り立てているのに気づいていない。
少し体を起こして大我の頭生えたウサギ耳に顔を寄せる。大我に聞こえるようにチュッと音を立ててキスを落としてやれば、視界の端で大我の耳が一気に赤くなるのが見えた。
「ウサギは寂しくて死んじゃうらしいから、今からいっぱい可愛がって」
「……ろっ」
「ん? どうしたの?」
一瞬大我の言葉を聞き取れず、思わず聞き返す。それはお前だろ、といいたかったのだろうか。可愛いな、と口元を緩ませた矢先―――突如勢いよく起き上がった。
「オレはいま試合が見たいっていってんだろうが! 邪魔すんじゃねーよ!!」
「いってぇ!!」
さっきまであんなに震えてたウサギ、もとい大我は怒りで顔を真っ赤にさせながら頭のウサギ耳を掴んで自分に投げつける。
日頃の成果が現れて、素晴らしいコントロールで自分の顔に直撃した。痛みでのた打ち回る自分など目もくれず、ふんっと鼻息荒くしてまたバスケの試合に集中してしまう。
「た、大我ぁっ……」
「うっせぇ、いまいいところなんだから邪魔すんな」
そんなにしたきゃ後でヤらせてやっから我慢しろ。
と、捨て台詞だけ残した大我の表情はもうバスケット選手そのものだった。一人途方にくれた俺はというと、涙目になりながらそんな男らしい大我を眺めることしかできなかった。
教訓:バスケ関連に夢中なときに着せてはいけない。
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