企画小説 | ナノ


頭がズキズキして目を覚ました。窓を叩く音がして外に目をやった。大粒の水がネズミ色の空から降りてきているのを確認して、頭を掻いた。
雨は嫌いだ。今日は憂鬱な日になりそうだなとシングルサイズのベッドから降りてテレビをつけた。

―今日、火曜日。大雨が続くでしょう。明日、水曜日からは晴れやかな天気が続くと思われます。

それだけ確認するとテレビを消した。真っ暗な画面に映った寝起きの自分の酷さに顔を歪ませたらよりいっそう醜くなってしまったので画面から目を背けて洗面所へ向かった。



いつもの服に着替え、傘をさして外へ出る。水溜まりをよけて街を歩いていると、向こうを歩いていたのはVネックにジーパンという割とラフな格好をしている知り合いだった。

「やっほーうクロロ」

「ナマエ」

「何してんの?」

「散歩」

「似合わない…」

「うるさい」

「クロロには傘も似合わないね」

「なるほど。チョップを喰らいたいわけだ」

「滅相もない」

防御体制に入ったら笑われてしまった。なんだかおかしくなって私も笑った。

「はいチョップ」

「なんで!?」



私達は近くにあったカフェに入った。オープンテラスは使えない。そりゃそうだ。

「本当に憂鬱…」

「雨は嫌い?」

「すごく、ね。すごく嫌い」

「どうしてそんなに嫌いなの?」

「んー…」

紅茶に砂糖を加えてスプーンを回した。雨が嫌いなのはどうしてなんだろう。理由なんてないんじゃないのだろうか。雨は唯、唯。本当に大嫌いで。いつから嫌いになったのかも、解らない。

「解らないや。理由がないんだよね」

「理由がない、かあ…」

そういうとクロロはガラスの向こうに目を向けたまま黙ってしまったので、私も同じ方向に目を向けた。相変わらずの豪雨で、もう二度と晴れないんじゃないかって考えてしまった。そんなことになったら私はきっと気が狂ってしまう。世界も終わるんじゃないかな。これは、決して大袈裟な表現なんかじゃなくて。だって、太陽がないと、人は生きていけないから。

「理由は、きっとあるよ」

「え?」

「雨を嫌う理由はあるよ」

「…うん」

クロロがそう云うんだから、きっとあるのだろう。理由、見つけてみるね。と云ったけれど、考える気は全くなかった。



頭がズキズキして目を覚ました。窓を叩く音がして外に目をやった。大粒の水が、ネズミ色の空から降りてきているのを確認して、頭を掻いた。

―今日、火曜日。大雨が続くでしょう。明日、水曜日からは晴れやかな天気が続くと思われます。

私は洗面所へ向かった。



いつもの服に着替え、傘をさして外へ出る。水溜まりをよけて街を歩いていると、向こうを歩いていたのはVネックにジーパンという割とラフな格好をしている知り合いだった。

「やっほーうクロロ」

「ナマエ」

「何してんの?」

「散歩」

「似合わない…」

「うるさい」

「クロロには傘も似合わないね」

「なるほど。チョップを喰らいたいわけだ」

「滅相もない…」



鈴の音が鳴り響いた。照明で明るいここのカフェは外から別世界に来たみたいに思えた。

「本当に憂鬱…」

「雨は嫌い?」

「すごく、ね。すごく嫌い」

「どうしてそんなに嫌いなの?」

「んー…」

私はコーヒーに砂糖を加えてスプーンを回した。雨を嫌う理由が解らなくて、素直に「解らない」と首を振ると、クロロは「そう」と目を伏せてしまった。

「でもね。きっと、理由はあるよ」

「…うん」

クロロがそう云うのだから、きっとあるのだろうね。



頭を掻きながらシングルサイズのベッドを降りて、テレビをつけた。

―今日、火曜日。大雨が続くでしょう。明日、水曜日からは晴れやかな天気が続くと思われます。

それだけ確認すると、私はテレビをつけたまま台所へ向かった。牛乳を片手にリビングに戻ったとき、テレビでは朝の占いがやっていた。私は12位だった。



なんとなくいつもよりちょっとおしゃれな服に着替えて、傘をさして外へ出る。水溜まりをジャンプしながら街を歩いていると、向こうを歩いていたのはVネックにジーパンという割とラフな格好をしている知り合いだった。

「やっほーうクロロ」

「ナマエ」

「何してんの?」

「散歩」

「あはは、私も」

「散歩の割にはおしゃれをしてるんだ」

「気分だよ気分」

「そう。じゃあ…お嬢さん、近くのカフェでお茶でもいかがです?」

「ぶふっ!喜んで」

「はいチョップ」

「痛い!!」



「どうしてそんなに雨が嫌いなの?」

「んー…」

ホット牛乳に砂糖を加えてスプーンを回した。どうして雨が嫌いなんだろう。唯、唯。本当に大嫌いで。いつから嫌いになったのかも、解らない。

「解らないや。理由がないんだよね」

「理由がない、かあ…」

そういうとクロロはガラスの向こうに目を向けたまま黙ってしまったので、私も同じ方向に目を向けた。相変わらずの豪雨で、もう二度と晴れないんじゃないかなんて考えてしまうと、悲しい気持ちになった。

「…でも、やんでほしくもないんだよなぁ」

気が付いたら、私はポツリと、呟いていた。

「…あれ。私何云っているんだろう」

クロロの方をみると、クロロはこっちをじっと見ていた。その目からは、悲しいのか、怒ってるのか。感情は、私には読み取れなかった。

「…ナマエ。雨を嫌う理由、本当に解らないの?」

「……え?」

「…あの日も、こんな大雨だったよね」

クロロはまた窓の外を見た。雨は、さっきよりひどくなっている気がする。

「…限界、だろう」

「…………」

クロロはコーヒーを一口飲んだ。カタン、という音がしたのを最後に音は止まった。辺りには、人がいなくて、まるで世界に二人だけしかいなくなってしまったみたい、なんて。ロマンチックな響きに聞こえて嗚呼、素敵。

「実際、この世界にはオレ達しかいないんだよ…もう、止めよう。ナマエの能力だって、限界だ」

始まりは、大雨の日でした。



窓を叩く小さな音がして目を覚ました。テレビをつけて、天気予報を確認する。

―今日、火曜日。大雨が続くでしょう。明日、水曜日からは晴れやかな天気が続くと思われます。

それだけ確認すると台所へ向かいコーヒーを淹れた。リビングへ戻ると、朝の占いがやっていて、一位だったことにちょっと気分が上がったから、おめかしをして家を出た。雨の日は散歩に限る。



水溜まりをジャンプしながら街を歩いていると、すごく目立つ格好をしている知り合いを発見。

「やっほーうクロロ」

「ナマエ」

「何してんの?」

「仕事の下見」

「私は散歩ー」

「散歩にしてはおしゃれだな」

「まあね。いいことあったの」

「ふーん」

「あっ、ねぇ。時間あるならカフェでお茶しない?」

「逆ナンか。仕方ない、受けてやろう」



可愛い鈴の音が耳に届いた。「いらっしゃいませー」と云う美人な店員さんに案内された席へ二人で座る。

「あー、やっぱり目立つなあ。クロロの格好。なんか恥ずかしくなってきた」

「なんでお前が恥ずかしくなる」

たわいのない話は花が咲き、気が付けば時計の針は一回り進んでいた。クロロは、「じゃあ」と席を立って、カフェを出て行ってしまった。「またね」って別れた時、雨は一層激しくなりまして。

それが、クロロを見た最後でした。



「クロロ、私、本当は…気づいていたのかも、ね。少しずつぶれながら繰り返していく私の造り出した世界…ぶれが生じてきていたってことは、私の能力ももう限界だったんだね。自分で造り出した世界で、自分の中の記憶のクロロと、同じような火曜日を繰り返して満足していたなんて、私も愚かになっちゃったなぁ」

音の無い世界。私の声だけが空気を震わせた。

「クロロは、死んじゃった、もんね」

言葉にすると、涙が溢れてきた。拭っても拭っても止まらなくて、どうしようなんて考えられないぐらいに泣けてきた。もうずっと涙が止まらなくなって、私は涙の海に取り込まれるんだ。きっとそのまま溺れてしまうのね。

「ナマエ」

掬い出してくれたのは、あなたでした。

「大丈夫。また、いつか会えるから」

クロロは優しく微笑んで席を立つと、私の手を掴んで、カフェの入り口へ引っ張った。
向こう側は明るくて、暖かくて、まるでお日様みたいだった。

「明日はきっと、晴れるから」

最後に触れたクロロの体温は、確かに暖かかった。



頬が濡れる感触で、目を覚ました。鳥のさえずりを聞きながらシングルサイズのベッドを降りてテレビをつける。

―今日、水曜日。しばらく晴れやかな天気が続くと思われます。

雨は、確かに上がっていた。
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