日常編 | ナノ



「杏にシャマル!?」

「お前何でここに…。つーかヘンタイやぶ医者何してやがる!」

「保健のおっさん、杏を離そうぜ。
つか杏って女子と後から来るんじゃなかったのか?」



みんな私に気付き、こっちに向かってきてくれている。

武の言う通り本来ならビアンキや京子やハルちゃんの女子組が作ったお弁当などを持ってくる予定だったのだが風紀委員の仕事が入ってしまった。

それを言おうともシャマル先生に抱きつかれているため言うことが出来ない。




「杏ちゅあ〜ん、キスしちゃおっかな〜」

「い、嫌ーっ!」



シャマル先生は唇を立てて近づいてくる。

自己防衛で本気で殴ろうとしたその時、何かを殴るような大きな音と共にシャマル先生が悲鳴をあげて地面に倒れていった。


そして倒れたシャマル先生の後ろにいたのは




「雲雀さん…」



トンファーを持ち構えた雲雀さんだった。




「…あっちにいてって言ったよね?

杏は草食動物と関わると何が起きるか分からないんだから」


「ご、ごめんなさい…。でもそんな言い方…!」



確かに言われたことを私は守らなかったし、助けてもらったことには感謝をする。

でもそんなこと言わなくてもいいじゃないか。


そう反論すると雲雀さんからボソッと聞こえた。




「…それで僕がどれだけ苦労してるか」

「え?」




だけど雲雀さんが今言ったことは上手く聞き取れなかった。




「…何でもない。

じゃあ僕はこの草食動物達を咬み殺すから杏はどっか行ってなよ」

「…え、ツナ達を!?やめてください!何で…」

「群れる人間を見ずに桜を楽しみたいから」




そんな理由で雲雀さんは…。

そう考えてしまうと改めて彼の理不尽さと恐ろしさを知る。


雲雀さんや隼人はすごくやる気だがとにかくそんな乱闘を起こさせてはいけない。

………が、私の止めもむなしく乱闘が始まってしまった。





そしてそれから数十分後。

膝をついたら負けというルールで負けたのは雲雀さんだった。

負けた…とは言え敗因はシャマル先生が発動したトライデント・モスキートにあるのだが。



「雲雀さん、大丈夫ですか…?」



私は未だ軽くフラついている雲雀さんに声をかける。

雲雀さんは今、フラつきながら並中に向かっているのだ。
私が支えようとしたら、雲雀さんからは「別に必要ない」の一点張りされてしまったので私は彼の後ろを歩く。




「大丈夫って言ってるでしょ。心配しすぎなんだよ、杏は」

「でも…」



雲雀さんがフラついている理由。

それはそのトライデント・モスキートが発動した桜に囲まれると立っていられなくなると言う桜クラ病と言う病気のせいだ。
だから負けてしまった。

…何て言うか変な病気だ、本当に。


負けてしまった時、雲雀さんは私にツナ達とお花見してていいよ、なんて言ってくれたけどそんなこと出来るわけがない。

こんなにフラついてる人を放っておけないし…それに何だか、何故だか分からないけど他にも理由があった気がする。


そんな彼の優しさに胸の中が熱くなったのはきっと気のせい。




「それ以上余計なこと言ったら仕事増やすよ」

「え、そんな…」



仕事を増やされるのはあんまり嬉しくない。

雲雀さんはそんな私を見てくすりと笑っていた。


そんな雲雀さんはだんだん歩いていくうちにフラつきも収まっていき、並中に着くと結局風紀の仕事をたくさんやるはめになったのだが…。




「杏」

「はい」



仕事最中に名前を呼ばれ、雲雀さんの方を見ると楽しそうに笑いながら言った。




「今度こそ花見しよっか」

「!」



まさか、雲雀さんからこんな言葉が出るなんて思ってもみなかった。


だけど…




「、はいっ!」




すごく嬉しい。


私の今の表情は満面の笑みと言っても過言じゃないかもしれない。

それくらい嬉しかった。




「……!」



その時の雲雀さんの表情は上手く見えなかったけど、若干頬が赤く見えたのは見間違いだろうか。




「(よーし、仕事頑張るぞ!)」




結局、今日はお花見じゃなくしこすることになってしまったが楽しく過ごせた一日だった。




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