日常編 | ナノ



今日は2月13日。

何だか少しだけクラス内が騒がしい。
いや、クラスだけでなく学校全体が何だか騒がしかった。


そんなことを思っていると京子にこんなことを質問された。




「杏ー、明日何の日か知ってる?」

「明日?」



明日…明日って何の日だっただろうか。

今日が13日だから明日は14日…2月14日……ああ!



「もちろん知ってるよ!明日はバレンタインでしょ!」



そうだ、世間一般に知られている年に一回の行事バレンタインデー。

女の子が好きな男の子にチョコレートをあげたり女の子同士で交換し合う、(お菓子が大好きな私にとっては)とても楽しい行事だ。

もちろん私は後者の方しかしたことがないけどね。



「杏が知ってるなんて珍しいわね…。
ひょっとしてチョコ渡す相手いるんじゃないの?」

「それくらい知ってるよ!もちろん花や京子にも作るからね!」

「…は?あんたまさか本命とかいないわけ!?あ、ありえない…!

とにかく明日は私達以外にもちゃんと作ってきなさいよ!」






そしてバレンタインデー当日。
昨日花にそう言われたためお世話になったある程度の人には作ってきた私。

…とは言え…



「武〜!チョコあげる〜!」

「サンキュー」


「獄寺く〜ん!チョコもらって〜っ」

「てめーら着いてくんじゃねぇ!」



私がチョコをあげようとした人達は大人気でした。

さすが武に隼人だ…。
何だか他の男子が可哀想に思えるほどの女の子が2人を囲んでいる。


隣の席のツナも私と同じような目で武と隼人を見ていた。



「あの2人すごいな〜。帰りまでひっきりなしだ」

「ねー。あ、ツナ、チョコあげる!」

「えっ!いいの!?」



ツナはとても驚きながらも嬉しそうに聞き返した。

本当は武と隼人とツナでみんな一緒に渡そうと思ったのだが、それは無理に近い。
いや、一緒にどころか渡すことも困難だ、あの人気では。



「うん、もちろん!味は保証出来ないけど結構上手く作れたんだ!」

「ありがとう、杏!味ならきっと大丈夫だよ!(杏はお菓子なら抜群な美味さだからね)」



とても嬉しそうに答えたツナ。
ここまで喜んでもらえるとは思っていなかったな。

…あ、そういえばツナは毎年1個ももらえてないってリボーンが言ってた。
まさかそれは本当だったのか、リボーンの冗談だと思ってた…。

そんなことを思っていると、先ほどまで女の子に囲まれていたはずの武と隼人が目の前にいたのだ。




「杏ー、俺にはチョコねーのか?」

「………………」



聞きながらニカッといつもの爽やかスマイルをする武に無言の隼人。

何故2人は私の目の前にいるのだろう。
先ほど2人がいた場所を見てみるとまだ女の子がたくさんいる。

その子達は武と隼人の名前を未だ呼びまくり、キャーキャーと黄色い声をあげていた。




「あるけど…あの女の子達はいいの?」

「んー、いいっつーか…俺は杏からのが欲しいんだぜ?」

「…お前が作ってきたならもらってやるよ!」



ストレートに言う武に憎まれ口を叩く隼人。
相変わらず正反対だこの2人は。

でも武はちゃんとくれた人の分をもらっているからいいけど…隼人は他の人から1つももらっていない。

なのにあげてもいいのだろうか。



だけどそれを聞くと「良いからよこせ」的なオーラ全開だったので渡すことにした。





「サンキューな、杏。
杏の作ったのは美味いから楽しみなのな!」

「えっ、あ、ありがとう…」



そんなにストレートに言われるとなんだか照れてしまう。
自分の顔が少しだけ熱くなるのが分かった。

一方隼人はーー…




「けっ、どうせ不味いんだろうけどな!」

「ひどっ、そんなこと言うならあげないから!」

「な、なんだと!」



隼人は相変わらずだ。
不味いと思うならもらわなきゃいいのに…。

そうは思ってもなんだかんだ結局あげることになるのが毎回のことなのだが。


そして2人にあげ終わったとほぼ同時に、京子がカバンを持って私のもとまで来た。





「杏!一緒に帰ろう!」



そう、今日は沢田家でお世話になっている人みんなに
チョコを作ろうと京子とハルちゃんで考えていたのだ。

時はすでに放課後。
なるべく早く帰って作ると言う計画だったのだけれど…。





「…京子、ほんとにごめん!私…まだ渡してない人がいる」



朝か昼休みのうちに渡そうと思っていた人。

だけどクラス内で友チョコ交換や何やらやっていたら結局放課後になってしまったのだ。


でも、絶対に渡したい。

何故だかそんな気持ちになっていた。



「ふふっ、そうだと思った。渡してきなよ。
渡した後に帰ってきてくれれば良いからさ」

「ありがとう、京子!」




もともと分かっていたかのような京子にお礼を言い、私は応接室に向かって行った。



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