「あった!これこれ!」
台所に向かったあと、冷蔵庫にあるものを確認する私。
冷蔵庫の中の私の目線は昨日作ったクッキー。 昨日作ったのだが、作りすぎてしまったのだ。
よし、これを差し入れに持って感想を聞こう! ……前より見た目は悪くないはずだから。
お皿に入れ、準備し終えたその時。
「…おい」
「わわわっ!ビックリした!獄寺くん、どうしたの?」
台所の入り口にいた獄寺くんに声をかけられたのだ。 いきなり話しかけられたから超ビックリしたぁ。
でもどうしたんだろう、さっきまでツナの部屋にいたのに。
「………別に何でもねーよ!」
「え、何でもないのに台所に来たの?」
「うるせぇ!そういうお前は何やってんだよ!?」
「(変な獄寺くん…)差し入れのクッキーの準備してるの! どう?前より美味しそうじゃない?」
よく分からない獄寺くんのことが少し気になったけど、そこまで気にとめずお皿に乗せたクッキーを見せる。
…すると獄寺くんからはひどい反応が返ってきたのだ。
「………お前これ買ったもんだろ」
「ひどっ、これ私ちゃんと作ったんだからね!ツナに聞けば分かるんだから!」
「ほんとかよ?ったく…」
獄寺くんはそう言いながら私と一緒に二階に戻ろうとする。
「…なぁ、お前ってその……」
「?」
その時、獄寺くんに呼び止められて自分の足が止まる。
「野球馬鹿と仲良いのか?」
「……へ?」
いきなり聞かれた予想もしない質問。
野球馬鹿とは武のことだろう。 ……なんで?
「…いいから答えろよ」
「え、仲良いと思う…よ?武良い人だし話しやすいし。でも何で…?」
「………………」
「………………」
ちょっと何、この沈黙。 獄寺くんどうしたんだ一体。
てかこの沈黙は気まずすぎる。
「…お前、俺の名前分かるか?」
「?獄寺くんでしょ?さすがにもう覚えたよ!」
「違ぇよ!名前だ名前!」
「え…?隼人、でしょ?」
名前くらいは知ってる。 だからそう言うと立ち止まってた獄寺くんは二階へ向かい出した。
訳も分からないまま私はついていくように歩く。
「…じゃあこれからそう呼べ!」
「え!?あ…」
すると獄寺くんは歩く速度を速めて先に部屋に戻ってしまった。
私はクッキーを持っているため速めに行けず、獄寺くんを見ているだけだった。
最後にチラッと見えた獄寺くんの頬が赤かったような気がした。
「要は…これから隼人って呼べばいいのかな? うん、そういうことにしておこう!」
よく分からないけどきっとそうだろう。 そう考えていく内にゆっくり歩いていた私はツナの部屋についたのだ。
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