(藤内と数馬)


_眠る支度を整えて手持ち無沙汰になった藤内はふと思い立って、まだ机に向かって何やら書き物をしている数馬の背中に寄りかかった。
_そのままの体勢で「そういえばさ」と藤内は口を開く。
「何故だか作法委員は代々保健委員を苦手としているらしいね」
「ああ。医務室で作法の先輩方や後輩を見ていると確かにそうかもしれないと思うね」
_数馬はあっさり答えた。背中合わせで藤内はふむ、と考える。
_確かに立花、善法寺両先輩や後輩である一年は組の兵太夫、乱太郎のやり取りを客観的に見ていると、成る程そうかもしれないと思いはする。
_保健委員である伊作や乱太郎に気負っているところは見られず、やはり作法委員が一方的に苦手意識を抱いているようではあるが。
「僕たちはどうだろうか」
_今の作法、保健両委員会で同室なのは三年の自分たちだけである。
_藤内としては特別苦手意識など持っていないし、数馬とは仲良くやっているつもりだ。だから先輩や後輩が保健委員を苦手とする理由も、藤内にはいまいちわからない。
_こればかりは予習でどうなるわけでもなく、藤内は首を傾げた。
_そんな藤内の様子を背中で感じ、数馬は言う。
「んー確かに藤内も甘え下手だなとは思うけど」
「え」
「作法委員が保健委員を苦手とするのってつまりそういうことだろう」
_数馬はあっけらかんと笑うと手早く机の上を片付け、「お待たせ。眠ろうか」と言って、何やら考え込んでしまった藤内の肩を叩いた。
「どういうこと?」
_藤内が眉間に皺を寄せて真剣に悩んでいるので、その皺を指の腹で伸ばしてやりながら数馬は幼子に言い聞かせるような柔らかな声を出した。
「あのね、君たち作法委員は甘やかされることに対して肩肘張りすぎ」
_僕ら保健委員はいつだって君たちを甘やかす準備が出来ているんだよ、と言う。
「だから気負いせず、いつでも医務室においで」
_そう言う数馬の笑い方は、現保健委員長によく似ていた。


20120211

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