(伊作と乱太郎)


_代々、作法委員は保健委員を苦手とする傾向があった。
_何てことはない、傍若無人唯我独尊を地で行く作法委員でさえ、怪我や病気をした折りには医務室へ赴き、そこで世話になる保健委員に絆されてしまうという、それだけのことだ。
_委員会の条件として挙げられているわけでもないのに、何故か毎年作法委員会には自尊心の高い生徒が多く集まる。まるで、毎年保健委員会に不運な生徒が集まるように。
_作法委員はたとえ医務室であろうと他人に弱味を見せるのを嫌う。怪我をしていようと患っていようと、疲れが溜まって精神的に弱っていようと。
_それでもそこに上手く付け入るのが保健委員の本分である。治療と手当てだけが保健委員会の仕事ではない。気を張っている相手の隙を突き安心感を植え付け安息を与える術を保健委員はよく心得ていた。
_作法委員にも保健委員の懐は温かく心地良い。しかし作法委員にとってはそれがまた認めがたいことなのだと言う。孤高の作法委員会が不運な保健委員会に絆されてしまうなどとは。
「何でそんなに意地を張るのか、正直わっかんないよねえ」と話を締めくくった伊作に、聞き手を務めていた乱太郎も「はい」と素直に同意した。
_思い当たる節があるなあと同級の作法委員である一年は組の兵太夫の顔を思い浮かべる。
「まったく生きにくい人たちだよ!」
_素直に甘やかされれば良いものを、と保健委員長は逞しく笑った。


20120211

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