_その、男の子は。
_ほんの少し切れ長の目に、さらさらツヤツヤの黒髪を持っていて、綺麗な子だなあと私は思わず見惚れた。
_一方の彼は私の顔を見るなりびっくりした表情で固まって、瞬きすら忘れたように私の顔をまじまじと見つめていた。
_その視線に何となく居心地の悪さを感じながら考える。
_彼の反応はとても初対面には思えない。けれど、彼とはたった今初めて会ったばかりのはずだ。それとも以前会ったことがあったかしら。
_こんなに綺麗な男の子、過去に出会っていたら印象に残っているはずだし、一度会った人の顔は忘れないのが私の特技だ。それでも、この反応は。
_私が一生懸命記憶を手繰っていると、小さな声で彼が何事か呟いた。聞き取れなくて、思わず問い返しそうになったけれど、あまりに失礼だと思って言葉を飲み込む。誰かの名前のようだったけれど、少なくとも私の名前ではなかった、と思う。
「あの、失礼ですけどどこかでお会いしましたか?」
_堪えきれず、失礼を承知で私が尋ねると彼は雷に撃たれたような顔をした。それから、すうっと表情が冷める。心なしか顔色も悪い。
_ああやっぱりどこかで会ったことが? 私が慌てて謝ろうとすると、彼はゆっくり首を横に振った。それから、にこりと笑顔。改めて綺麗な子だなあと私は場違いに感動する。
「いいえ。今日、はじめてお会いしましたよ」
_その笑顔が何故だか少し泣きそうに歪んで見えた気がしたのは、私の気のせいかしら。

_春。
_すべてが始まる季節の、これが私と摂津くんの出会い。


20120326

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