(乱太郎♀としんべヱ)


_きり丸が庄左ヱ門のところで頭を抱えている、ちょうどそのとき。
_もう一方の当事者であるところの乱太郎はしんべヱとのんびりお茶を飲んでいた。
_きり丸の発言に乱太郎が悲しみ憤った直後、しんべヱは乱太郎から相談を受けていた。そして乱太郎の妊娠をきり丸よりも先に聞き、真っ先に諸手を上げて喜んだのがしんべヱであった。
「家族がいらないだなんて嘯くあの馬鹿を、一体どうしてくれようか」と怖いくらい真剣な顔をして考え込んでいた乱太郎に「乱太郎が家族になってあげればいいじゃない」とごくごく簡単にアドバイスしたのは、実のところしんべヱであった。乱太郎が即行動に移り既成事実を作ってしまうとは、流石にしんべヱも予想していなかったが。

_茶菓子の饅頭を分け合いながら、しんべヱは乱太郎にのほほんと笑いかけた。
「上手くやったねえ乱太郎」
_半分に割った饅頭を手に乱太郎は「うん」と満足げに頷いた。
「天涯孤独に浸ろうったって、私がいる限りそうはさせないんだから!」
_亡くすのが怖いから血を分けた子供がいらないだなんて言わせない! もう絶対に独りきりになんてさせやしない! と拳を握って力強く語る乱太郎にしんべヱは笑う。
「乱太郎がそうしてそばにいれば、きり丸は多分一生幸せでいられるね」
_饅頭をもう一つ頬張り、しんべヱはもふもふと言う。
「お祝いはたんと弾むよ」
「うん。出来たら、きり丸の目が眩んで後戻り出来なくなるようなのをお願いね」
_福富屋の跡取り息子は胸を張り、乱太郎の頼みを快く請け負った。

_こうした友人たちのおかげで、きり丸は独りきりの不幸でいることが許されないのだ。


20120212

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