ふわり、なんて優しいもんじゃあない。甘ったるい女物の香水の香りが鼻腔を通って脳天まで突き刺さった。
虚ろに動かない視線を少し手前の床へと向けたままで微動だにしない私に、ベルは首を傾げる。

「何、嬉しくないわけ?」
「……ううん、ただ珍しいなって思っただけ」

こんな、廊下の真ん中で。
元々ベルが私に抱擁を与えることすら稀なことなのだ。
それとも、当て付け何かなのだろうか。

嗚呼、頭の奥がぐらぐらと揺れ始めた。


「今夜中には帰ってこないと思ってた」
「……ししっ、お前が待ってると思って帰ってきた」

白々しく思うのはどうしたことだろうか。少しシニカルな気分。

「そんなカッコじゃ風邪引くぜ?」

そうして、ネグリジェだけの私の肩に掛けられたシャツからもやっぱり明らかに私の知らない女物の香りがした。

抱きしめられた途端、頭の奥から響いてくる痛みに相乗作用でやってくるイライラ感をやり過ごすために、目を閉じてエゴプラの香りを探してみたものの、欠片もそんなものはなかった。


少し意識が遠退いた、午前3時。


目が覚めると、すっかり私にまで染み付いたあの匂いにいつもならベルが目を覚ますまで待っているところを、そっとベッドを抜け出してバスルームへ一直線。
気持ち悪くて仕方ない。

キュッと蛇口を捻ってから、しまったと思う。
温度調節にしくじった。

私はどうして朝方からこんなに冷たい水なんか浴びなきゃいけないんだろう。

濡れた布が肌に張り付く、

「……お前、何してんの」

妥当な質問だな、と思った。バスルームに座り込んで、本当に

私ったら、何やってるの。

「冷てっ!?……お前、頭沸いた?服着たまま水浴びとか」

背後から回された腕の温もり。

目元がやけに熱くて、もしかして私ったら、泣いてる?

バカみたい。

全部、流されてけばいい。

私と貴方にたった一晩で染み付いたどこの誰かも知らないオンナの匂いも、私の下らない涙も。
今、こうして嫌悪感なしに触れていられる内に二人の体温ごと、奪っていって欲しいの。











あとがき
なんだこれ。名前変換すらないじゃないか。
しかも暗すぎる。会話も少ないし
個人的に王子はエゴプラつけてそうなイメージ。
うちの王子はこういうのが基本です(笑)

でも、愛はあるんだよ!ちゃんと!上手く説明できない。王子と姫。

101114
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