今日の帰りは珍しく電車はガラガラで、気分よく乗っていたはずだった。さっきまでは。基本的に校外の知り合いには登下校の最中に出くわすのが好きではないから、そこから気分はがた落ちである。
「……なまえ?」
「あっれー草灯サン?」
この人を電車の中で見かけるなんて結構珍しいと思う。そんな胡散臭さ全開の人を手招きして隣を促すと怪訝そうではあるものの、隣に座った。
「どうしたの、それ」
「見てわかんねー?」
「いや、分かるけど……どうしてそんなのつけてるの」
草灯は俺の頭にくっついている黒い耳をちょいちょいと突ついた。まぁ、この人は俺がとっくの昔にミミ落としてることくらい知ってるから、この姿を不審に思うのは当たり前だろう。
「あのねー、俺こう見えて受験校の生徒なの」
「あぁ、それでそんなのしてるんだ」
「そーいうこと」
流石に平穏な学校生活が重要なことくらい俺も分かってる。多分、俺の通ってる学校でミミ無しで登校したらソッコー退学になるかもしれないなぁ、と苦笑する。
幸い、ピアスホールはまだバレてないし髪は結構傷んできてるからしばらくは黒にするつもりだし、あとは耳と尻尾さえ誤魔化せばどうにかなるだろうということだ。
「不純同性交友ってヤツだ」
「普通、不純異性交友って言わねぇ?」
「同性でしょ、なまえの場合」
「まぁ、どっちもイケるんだけどね」
すごい内容ヒドイ会話だよね、なんて草灯は笑う。
「でも、時々スゲー真面目そうな子が付けてんのに気づくとドキドキするわ」
「あぁ、それは分からなくもないかな」
えっと、あの子名前なんだったっけ……
あとがき
愛無好き。ちなみに彼は下校しつつ律先生ん所に行く予定だったり。
あの子は江夜で同じ学校という裏設定。
あまりにも財前が続いたので閑話休題的な。
ちなみに課外中に書いた。先生に見られたけどあんま怒られなかった。でもちょうど不純同性交友の行見られたから恥ずかしくて死にたくなった私でした。
110628