舌の上で広がる、苦味と甘さにふわりと口角を上げるとテーブルの向かいのルッスーリアも同じように笑った。
「……美味しい?なまえ ちゃん」
「うん。美味しいよ」
もう一口、スプーンを口に運ぼうとすると後ろから伸びてきた手が右手を捕らえ、スプーンの上の欠片は消えていた。
「んもうっ!ベルちゃん!」
「んー……うめぇな、これ」
「なまえ、もう一口。」
口を開けるベルにそろそろとスプーンを差し出すと、ぱくりと食べて頬に口付けられた。
「ありがと、なまえ。」
「どう、いたしまして……」
「ししっ……どうした?二口くらいで拗ねんなよ」
別に、そういう意味じゃあないのに。詰まる言葉とそれ以上手をつけようとしないのを不審に思ったのか顔を覗き込もうとしてくるベルだけど、顔を見られたくないこちらとしてはどうしようもなく視線を更に下に向けるしかない。
「ベルちゃんたらもう。仕方ないわねぇ……ちゃんとベルちゃんの分もドルチェ用意してるわよ?」
「いーじゃん、そういう気分だったの」
呆れたように溜め息を吐いて、ベルの分のドルチェをテーブルに置いたルッスーリアは任務の為に部屋を出ていってしまった。
「……なぁなまえ」
「なあに?」
「ティラミスってちゃんと発音してみ」
「……え……?」
きょとんとした表情を浮かべているのに急かすようにふにふにとスプーンで頬をつつかれる。
「……Tiramisu?」
「ししっ、喜んで」
訝しげに口にした途端、ふわりと宙に浮く身体。
「えっ……ちょっと、」
「Tirami su!って言ったろ?」
「……私を引っ張り上げて」
確かに、引っ張り上げられて?はいるけど。
「ししっ……ばぁか。"私を天国へ連れていって"ってのもあったろ。お望み通りにしてやるよ、お姫さま」
「やっ……あたし別に……!」
大袈裟に、取りすぎだと思うの。それは。
あとがき
はい、暗転(笑)
やっぱり、一発目は甘めで(書きためられてるのは恐ろしく暗い)いってみました。
どうせ●しば見て思いつきましたが、何か。