世の中の女の子には魔女になるか、お姫様になるかという選択肢しかないのだ、と昔誰かに聞いた。
そして、その人は私に言ったのだ。
「貴女はいいわね、最初から素敵なお姫様で」
それは嫌味でしかないということに気づいたのはつい最近のことで、その当時の私は良く分からずに曖昧に笑っただけだ。
最早、私は魔女に近いくらい無様だ。
「お前は俺と結ばれる運命なんだよ、解ってるよな?なまえ、」
「……ジル、」
約18年ほどぶりに会った許嫁(というべきなのかどうかは疑問だけれど)は簡単に言ってしまえば敵、のはずなのに私に手を差し伸べている。
「あの紛い物はお前には相応しくねぇ、正統王子はこの俺だ。だからお前は俺のもの……常識だろ?」
そうだ。
私が本来隣に居るべきはこの人で、そうすれば私はお姫様でいられる。
「……ジル、ラジエル……」
だけど、ね。
「それでも、あたしはベルが好きなの」
例え、貴方がそう言っていても私の王子様はあの人だけ。
このままだと私は魔女になってしまうでしょうから。だからきっと、私は貴方のその手を取ることはしない。
「気に食わないのなら、今すぐ殺して頂戴」
どちらにしろ、私の望んだ未来は手に入らないのだから、お姫様にも魔女にもならないまま舞台を降りて逃げ出すの、最も卑怯なやり方でしかないけれど。
「……おいなまえ、俺がこの世で一番愛してる女を殺すと思うか?」
私が一番愛してるひととそっくりな笑い方で、貴方は笑う
「俺が"本物"なんだってこと、じっくり教えてやるよ」
あとがき
お初な汁様です。魔女とお姫様の話はずっと書いてみたかった。
姫的にはベルと結ばれなきゃお姫様ではないんです。
ベルの見解とか、何故姫にとってベルが王子様なのかとかはまた今度。