日中は各人が様々な騒動を引き起こし、それが合わさって無駄に騒がしいヴァリアー邸は夜中になると恐ろしく静かだ。
幹部を含め、多数の隊員が任務のため出払っていることもあるが、その他の者も当たり前に寝入っている。

この時間帯に歩き回る癖が出来たのは、此処に来る前からのものだけれど、昼の喧騒と真夜中の静けさというのは、どこにいようと不思議と変わりの無いものだった。

「ねぇ、まだ起きてたの?」
「お前こそなぁ」

何となく、この夜の静寂の中だからだろうか、スクアーロの声も普段のそれよりは幾分か穏やかであった。

「終わってないんだ?デスクワーク」
「まぁなぁ……ひっきりなしに邪魔しに来る連中が大勢いやがるからなぁ」
「そう、大変ね」

招かれた空間は相変わらず殺風景で、私が腰かけた手近なソファからは、デスクの上に広げられた紙の束がよく見えた。見慣れた筆跡が走っているそれは、報告書らしい。

「で、なまえはこんな時間までなにしてたんだぁ?」
「お散歩。このくらいの時間が好きなの」
「う゛ぉ゛ぉ゛い……普通に考えてこの時間は危ねぇぞぉ……」
「何か昔からの癖みたいな?」

スクアーロは呆れているようだけど、癖なのだから仕方がないのだ。
別に、この邸の外へ出なければそこまで危ないというわけじゃないし。

「まぁ此処も夜は静かだからなぁ」
「だからスクアーロもこの時間にお仕事してるんでしょ?」
「そういうことだなぁ……」

デスクの上にある書類は残り少ない、彼ならあと30分もしない内に片付けてしまうだろう。

「ねーぇ、一緒に寝てあげようか?」

ニコニコ笑って訊いてみるけれど、別段慌てる様子もなくペンを走らせているものだから、つまらない。
フランならもう少し何か言ってくれるのに。
「バカ言ってんじゃねぇ、さっさと部屋戻って寝ろぉ」
「えー……あたしにしてはかなりレアなこと言ったつもりなんだけど?」
「おーおー、分かってるぞぉそんなことは」

自分でも冗談のつもりで言ったのだけど、このようにあしらわれて気分のいいものではない。
そのせいかなんなのか、目が冴えてきた。それもこれも、目の前のキラキラしたシルバーのロン毛のせいだ。
こうなったら、私がまた眠くなるまで付き合わせてやる、と思って最後の一枚目に手をつけたスクアーロに声をかけた。

「じゃあ、代わりにコーヒーでも淹れてあげる」








あとがき
鮫はお兄ちゃん気分で姫に接してます。あんまり邪魔しないし甘えてくるからかわいいと思ってるといい。
フランでもちょっと動揺すると思うよ!いくらあの子でも気になってるお姉さんには弱いよ!



title 性懲りも無く現れた睡魔に平伏すことが無いように

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