うつくしく

 フィガロ先生を取り合って、ミチルと取っ組み合いの喧嘩をした。

「先生は今日、ぼくとあそぶって言ってたんです!」
「私だってそうだもん!」

 お互い泥んこになって、髪や服や身体中のあちこちに牧草をくっつけて、膝小僧にかすり傷をつくった。騒ぎを聞き付けたルチル兄さまが文字通り飛んできて、優しく私たちを引き離した。

「ダメでしょう。仲良くしなきゃ」
「だって!」
「ミチルが!」
「ぼくじゃない!」

 ついに声をあげて泣き始めた幼子ふたりにルチル兄さまがアワアワする後ろから、フィガロ先生がやってきた。

「おや。どうしたの?」

ルチル兄さまから状況を訊いた先生は、とても愉快そうに「あはは」と笑った。

「いやあ。フィガロ先生ってば、モテすぎて困っちゃうなあ」

 先生は、ちっとも困った顔なんてしていなかった。結局その日は、フィガロ先生とルチル兄さまとミチルと私の四人で遊ぶことになり、途中からは、そこにレノさんも加わった。それはそれで楽しかったけれど、本当は、今日はフィガロ先生と二人だけで遊びたかった。「ほら、ごめんなさいと仲直りの握手は?」これも嫌だったけれど従った。ここで私が先生の言いつけをちゃんと受け入れれば、次にフィガロ先生が何をしてくれるか分かっていたから。

「ごめんなさい」
「ぼくも、その、ごめんなさい」

 泥まみれの右手を出して、ミチルと握手をした。

「きちんと仲直り出来て偉いね」

 そうルチル兄さまに褒められたミチルは、恥ずかしそうだったけれど嬉しそうにしていた。それを眺めている私の頭の上に、暖かくて大きな掌が乗った。

「よしよし、いい子だ」

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