title | ナノ
瞬きと夢の後で／見ているか、聞こえているか／それは微睡みに過ぎず／裏を返せば真実に気付く／ヒキコモリ少年は／空が大嫌いだった／描き溜めた幾枚もの色彩／否定され、嘲笑われ／罵倒の文字に溢れかえっていた／落ちる涙は水溜まりとなり／暗い淀みへ沈んでいく／悲しみ故に筆を捨てた／窓も開けない暗がりで／天井だけを眺めて／魔法をかけたのは／心の叫びに呼応する／旅の途中の見習い達／避ける少年を呼び続けて／笑って欲しいと望んだ／背を向けたままの少年に／一人が肩に手を置いた／泣きながら手を振り払う／怯える少年の震えた手／閉ざされた光を取り戻しに／心の中へと旅に出る／長く暗い迷路が阻み／擦れ違う少年の記憶／誰もが笑い、救いの無い日々／見習い達も泣いていた／理解した痛くて苦しい思い／口を揃えて決意した／空を創ろう／いつもの朝が起きた／ゆるりと開けた／少年の目に飛び込んだもの／部屋一面の天井や壁／空が創られていた／かつての罵倒に溢れた色彩／細かく煌めき、星を降らす／少年は久しぶりの朝日を見た／遠くで見守る見習い達／そっとまた、旅に出掛けた／太陽に顔を向けた少年は／もう一度だけ泣いた／見ているか、届いているか、