今日はいつも以上に心臓の音がうるさかった。


「おい源田、俺だ。……入るぞ?」
練習がなくて、暇で暇で仕方なかったから、暇潰しと宿題の処理も兼ねて源田の家へ遊びにいってやったらこの有り様。
いつもならすっきり片付いているリビングがぐちゃぐちゃになっていたのが一番印象的だった。
肝心の本人がいないので、その辺をウロウロ探しまわっていると、俺は、二階から小さく足音が聞こえることに気付いた。
「源田?」
その音を確かめるように、おそるおそる階段をのぼると、
「……きったねぇ!」
服は散乱、ノート……つか本類全般は積まれて脇に寄せられている。
「佐久間?」
奥の部屋からひょっこり顔を出したのは俺が探していた源田だった。
エプロンに三角巾。
どこかのお母さんを思わせる格好だが、これが源田のいつもの掃除スタイルだと知っている俺はさほど驚きはしない。
(そりゃまあ、最初は真っ先に源田の頭を心配したけどな!)
源田はどさどさと、たぶん手に抱えてたんだと思う大量の本(俺の予想は)を部屋に置いて、これまた大量に積まれた本の山を軽々と通り抜け、あっという間に見上げなければいけない距離まで来てしまった。
「……なにこれ?」
呆れたようにいってやると、なんかもうほんとに呆れるような答えが返ってきた。
「片付けをしているんだ!」
「それはみりゃわかる」
まだ終わってもないのに、まるで達成したかのようなきらきらした笑顔で言われて、俺はなんて返せばいいわけ?
俺も手伝えばいいのか?
宿題は?明日提出の宿題は?
まず片付けをするにあたった経緯を言えよ経緯を!
「天気がいいとなんだか片付けしたくなるよな」
「ならねぇから、断じて!」
俺の気持ちを察したのかは不明だが(きっと偶然だと信じている)ばっさり一刀両断したせいか、しゅんとなってしまった源田をみて少しだけ罪悪感が生まれる。少しだけだけどな。
まあ憎めないのは間違いないけど。
「べ、別に休みの日に片付けするのはいいことだろ」
「そ、そうか……?」
あ、生き返った。
なんか犬みたいだな。結構大型の。
「でも終わらないんだよなー」
「家中の掃除を一日で終わらせようとしてたんだろバカか」
リビングの有り様をみればわかる。
それだけ言って源田の胸を手の甲で小突いた。
そしてするりと源田の横を通り抜けて一番キレイに見える部屋に入るなり、俺は宿題とそのほか諸々しか入ってないショルダーバッグをその部屋のベッドに放り投げた。
そのまま素早く袖をまくって、手首に通していた髪ゴムで髪を結い上げ、俺は源田の前に再び立つ。
今度は突っ立ってるのではなく立ちはだかるようにしてわざとらしく仁王立ちをしながら聞いた。
「どこを手伝えばいいんだ俺は」
「………」
「なんだよ気持ちわりぃから見つめんな」
「手伝ってくれるのか……?」
「宿題教えてくれるなら」
「……さ、さくまー!」
「うわあ抱き締めんな気持ちわりぃって言ってんだろ!」
掃除をする気になった理由とか今日暇だから宿題持って来た理由とか。
聞かないでくれと必死に祈る。
聞かれてすんなり答えられるような理由は持ってないんだ、生憎。
だから今俺の心臓はうるさいんだよ!わかったか!



∴新しい君を知る





悠々さんから頂きました!
掲載するのが遅れてすみません…!

ありがとうございました!



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -