もうおしまい?








何度か意識が飛びそうになった最中、やけに冷たい指先が俺の鎖骨をなぞってきた。たまに触れる足先も同様に冷たい。俺で暖を取るかのように皮膚に皮膚を重ねてくる。その仕草で、虚ろだった意識が戻ってきた。
ふ、と漏らした吐息で上に被さっていた男は、俺の意識が戻ったことを悟ったらしい。

「お目覚め?」
「…冷てぇよ」
「シズちゃんが暖かすぎるんだよ」

くわぁと欠伸をすると、臨也は鎖骨をなぞっていた指先を徐々に、上に上げていき、首回りで一旦止めた。一瞬首を絞められるかと思ったが、暖を取るだけ取って指先はまた上に進んでいく。最終的には頬で手を暖めてくるという行動に移っていた。
臨也がなぞった場所の温度差が、眠気に負けそうな俺を現実に引き戻してくる。

「…俺をカイロにするな」
「いいじゃん、シズちゃん暖かいんだし。体温、分けてよ」

臨也が冷たいのは、指先と足先だけで、掌やほかの場所に至っては俺と変わらないくらいの温度だ。つまりはただの完全なる冷え症。
頬を弄んでいた臨也の手を掴み、俺の心臓の辺りにまで持っていく。
何の意図も無しにした行為だったが、その温度差は俺の眠気を飛ばすのに丁度いい温度だった。

「生身の人間の体温って生暖かいよね」
「お前の指は冷たいけどな」
「シズちゃんの肌と中はやたらと熱いよ?」
「死ね」
「俺には丁度いい温度だ」

結局最後には同じ温度で、同じ目線で、同じ感覚になっている。
取る行動は真逆。考えることは同じ。体温も同じに変わる。
似た者同士と言われればそれまでだが、臨也でないと駄目らしい俺からしたら似ているというより、コイツは俺なんだ。多分、目の前でニヤりと笑っている男も同じ事を思っている。大概腹立つが。
冷たかった臨也の指先は十分に温まっていた。俺の左胸とほぼ同じ温度で、触れている部分が熱くなってくるぐらいだった。
俺は胸元に置いていた臨也の手を放した。だが、手が放れるそぶりはない。

「ほら、もう終いだ」
「えー、もうおしまい?」
「熱いんだよ」
「残念。でも、まぁシズちゃんの体温、気持ち良かったよ。生暖かくて」

気が済んだのか臨也は、胸元から手を放し、上体を横に反らそうとした。どうにも寝る体制を取ろうとしているようだった。俺は、気が付けば臨也の腕を掴んでいた。

「もう終いか?」
「え?」
「手前のせいで目が覚めたんだよ」
「…シズちゃんもサカってんね」
「一応、人間だからな。」
「ホントにね」









もうおしまい?




2010/03/27

傀儡に提出させていただきました!




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