少し曇った日のこと。ときより日が雲から顔をだし、日が当たると暖かく眠たいな、とうつらうつらしている様な日だった。私は初めて神童拓人と会話を交わした。すれ違うことはあったものの会話など今まで1度もなかった。心配とか気になったという気持ちより前にただ1年生が頑張っている中動こうともしない彼らにいらだった。誰もいないグラウンド近くの木陰に座りこむ神童を見下ろし声をかけた。

「ねえ、」
「…きみは、」
「名前なんてどうでもいいよ。一言いいにきただけだから」
「…?」
「サッカー、嫌いなの?」

私の問いに神童は動かずただ眼を見開いた。それから焦ったように、迷ったように、視線を泳がせ口を動かした。声を出そうとしてやめて、出そうとしての繰り返し。そんな神童を見て私は眉を寄せた。

「私はすきだよ」
「…俺は、すきだけど今のサッカーは嫌いだ」
「…いいんじゃない?」

首を傾けて笑ってみれば神童は今にも泣きそうな笑顔を浮かべた。それから小さな声で「ありがとう」と呟いた。

「神童、ピアノ得意なんだよね?」
「え、ああ」
「よかったら今度聞かせて。それじゃあ」
「え、あ、あの、」
「なに?」
「よかったら応援、してくれるか?」
「…なんで?」
「君なら俺の背中を押してくれるかなって…」

神童は私をじっと見つめて言った。は、と声を漏らしたあとどうしようもなく笑えてきて思わず声をあげて笑えば神童は少し顔を赤くした。おそらく真剣に言ったのに、ってことなんだろうと思う。

「応援するよ。本気のサッカー楽しみにしてる」
「もちろん。見せてやるよ本気のサッカー」
「負けたらだめだよ神童」
「ああ、それじゃあ気をつけて」

嬉しそうに笑った神童に笑い返して歩き出した。泣虫キャプテンだなんて言われてた気もするけれどそうでもないと思った。なんだか嬉しくてゆっくり走り出していた。神童も音楽が好き。音楽は人を元気にする。想いを伝える。次の試合では彼のサッカーを、曲を存分に味わわせてもらおう。風を切るように走るスピードをあげた。

革命を起こせ、曲を奏でろ、我らが雷門サッカー部!



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